322 冠詞がつかない名詞? Il n’a jamais aimé personne.

名詞

特別な「personne」

今回のフレーズにある「personne」は「人」という意味の名詞だとして知られていますが、冠詞がついていません。 

フランス語では、よほどの理由がない限りは冠詞がつくので、このフレーズでの「personne」には、特別な意味があるのです。 

このフレーズの場所と背景

  • では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il n’a jamais aimé personne.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは第7章の後半にある王子さまのセリフです。 

「il n’a jamais aimé personne」

「il」は「彼」「それ」、「n’a」は、否定語「ne」の省略形「n’」と、「avoir」の活用形(現在形)「a」が合わさったものです。 

「決して~ない」という意味の「ne ~ jamais」で動詞を否定しています。 

「aimé」は「(人を)愛する」「(人が)好きである」「(モノ/コトを)好む」という意味の動詞「aimer」の過去分詞です。 

「a(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。 

「personne」は「人」という意味の女性名詞として知られていますが、冒頭で触れた通り、ここでの「personne」には特別な意味があるので、後述します。 

背景を見てみると

生死にかかわる飛行機の修理にかかりきりの語り手の男性は、羊と花の関係という、大事とは思えない王子さまの質問に対して適当に答え、2人は険悪な状況になってしまいます。 

王子さまは花の味方をするのですが、それどころではない男性は聞く耳を持ちません。 

今回のフレーズのある段落では、王子さまがある星で出会った他の男性について語ることで、語り手の男性が忘れかけていたことを思い出させようとしています。 

不思議な「personne」

さて前述通り、ここでの「personne」には冠詞がついていません。 

それは、女性名詞としての「personne」ではなく、代名詞だからです。 

代名詞の場合、ほとんどは「ne ~ personne」の形で「誰も~ない」という意味になります。 

今回のフレーズには「決して~ない」という意味の「ne ~ jamais」があるので、この「ne」は「ne ~ personne」としても使われているということがわかりにくくなっています。 

それでも「personne」に冠詞がついていないので、代名詞だと分かります。 

必ず否定の「personne」

なお、代名詞の「personne」は、必ず否定の意味で使われます。 

「ne」などの否定語が伴わない場合でも、否定なのです。 

特に話し言葉では「ne」などの否定語が省略されてしまうことがよくあるのですが、「personne」に冠詞がついていないなら、そのフレーズは否定表現です。 

「personne」の例文

簡単な例文を見てみます。 

  1. Il y a une personne ici. (ここに人が1人いる) 
  2. Il y a la personne ici. (ここにその人がいる) 
  3. Il n’y a personne ici. (ここには誰もいない) 
  4. Il y a personne ici. (ここには誰もいない) 

例文について

1番と2番は冠詞つき、3番と4番には冠詞がついていません。 

なので、1番と2番の「personne」は「人」という意味の女性名詞ですが、3番と4番の「personne」は代名詞で「誰も」という意味です。 

ただし本来、4番は文法的に間違っています。 

「personne」が代名詞として使われる場合は、否定語がつく決まりになっているからです。 

ただし前述通り、話し言葉では否定語が省略されてしまう場合もよくあり、4番「Il y a personne ici.(ここには誰もいない)」という言い方もよく聞きます。 

かなり特殊!

最後に、代名詞の「personne」が特別である、もう1つの理由をご紹介しておきます。 

「人」という意味の「personne」は女性名詞であるにもかかわらず、「誰も」という意味である代名詞の「personne」は、男性形として扱われるからです。 

この「男性形として扱われる」というのは何を意味するのかと言うと、形容詞がつくなら、男性形の形容詞がつくということです。 

やはりかなり特殊なのですが、慣れればそのおかげでわかりやすくもある表現です。 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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