【フランスでの生活】TGV設備の「破壊行為」に関する報道からわかること

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「破壊行為」の報道について

パリオリンピックに直接関係するものではないかもしれませんが、フランスの新幹線に当たるTGVの設備の「破壊行為」で、多くの人に影響が出てしまいました。 

この事件は、日本語ではどの報道でも「破壊行為」と訳されています。 

フランス現地でフランス語での報道に触れて、感じたことをお伝えします。 

フランス語の報道

フランスのTGVが運行できない状態になったとわかった時点で、誰もが「テロ」という言葉を真っ先に思い浮かべたと思います。 

そもそもオリンピックはテロの標的になりやすいですし、今回のパリオリンピック関連でも、5月に聖火がマルセイユに到着した時も、複数のテロが未遂に終わったという報道がありました。 

その報道の際に「テロ」という意味で使われたフランス語は「attentat」でした。 

でも今回の「破壊行為」に関しては、フランス語で「sabotage」と報道されています。 

日本語になっている?

この「sabotage」は、日本語の「サボる」の語源になった単語です。 

日本語の「サボる」は、「やらなければならないことをせずに怠ける」といった意味で使われますが、フランス語の「sabotage」はもっと過激です。 

というのも、元は産業革命の頃、工場で働いていた人が労働条件改善の抗議として、仕事で使う機械を動かなくしたり、壊したりする行為だったからです。 

いわゆるストライキがヒートアップしたもの、と捉えられます。 

ただし現代フランス語では「sabotage」の意味はさらに広がっています。 

抗議活動だけでなく、産業スパイや政治的な目的で何かを壊したり、戦争中に敵のインフラなどを破壊するのも「sabotage」と呼ばれるのです。 

テロと破壊行為の違い

そして先ほどご紹介した、「テロ」という意味で使われる「attentat」との違いは、「sabotage」がモノを標的としているのに対して、「attentat」は人・モノの両方を標的としているという違いがあります。 

そして「attentat」の多くは、政治的・思想的な目的を持って行う攻撃です。 

なので、日本語に訳されるときには「テロ」になるのです。 

フランス語には2種類のテロがある

ただしフランス語には、「terrorisme」という単語もあります。 

正確には、この「terrorisme」こそが本来の「テロ」です。 

「attentat」同様に、政治的・思想的な目的を持って行う攻撃なのですが、「terrorisme」には攻撃により、人に恐怖を植え付けて社会を不安定にする意図があります。 

報道の際は?

日本語では両方とも「テロ」と訳される「attentat」と「terrorisme」で、とても似てはいるのですが、実はフランス語で最初から「terrorisme」と報道されることはほとんどありません。 

重大な人とモノへの攻撃は、まずは「attentat」として報道されるのです。 

というのも、フランスで「terrorisme」と認定されるには法的な調査で、ある一定の基準を満たす必要があるからです。 

タイトルでわかる!

つまり事件直後の報道なら、ほとんどのケースで「sabotage」か「attentat」かが使われることになります。 

今回のTGV設備への攻撃は「sabotage」という単語が使われていたので、タイトルさえ見れば、詳細部分を読む前に、攻撃による人的被害はないということがすぐにわかりました。 

これが「attentat」なら、何らかの人的被害があったと感じます。 

さらに、ごく稀なことではありますが、最初から「terrorisme」と報道されれば、かなりハッキリとした思想を伴なうテロだとわかるのです。 

万が一のために

今回はかなり物騒な内容になってしまいましたが、この3つの単語の違いを知っていれば、詳細までは分からなくても、一定の目安にはなるはずです。 

フランスやフランス語圏にいて、「attentat」などの単語が聞こえてきたら、すぐに逃げるべきだと思います。 

パリオリンピックの開幕式は、けっこうな雨だったものの、無事開催されてホッとしました。 

パラリンピックを含めた残りの日程も、滞りなく平和に終えられるように、祈るような気持ちです。 

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