277 不都合な「都合」とは? Il est quelquefois sans inconvénient de remettre à plus tard son travail.

その他(王子さま)

奇妙な生き残り?

今回のキーワードは「inconvénient」です。 

他の多くの単語と同じように、ラテン語由来の言葉ですが、元の言葉の対義語だけがフランス語になった、奇妙な例です。 

同じルーツを持つ他の単語と組み合わせて覚えるとわかりやすく、忘れにくくなりますよ! 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il est quelquefois sans inconvénient de remettre à plus tard son travail.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第5章の後半にあります。 

第5章2枚目の挿絵から2つ目の段落にあるフレーズで、王子さまのセリフです。 

「il est quelquefois sans inconvénient」

「il」は「彼」「それ」ですが、ここでの「il」は特に意味を持ちません。 

「est」は「être」の活用形(現在形)、「quelquefois」は「時々」「時によると」、「sans」は「~なしに」、「inconvénient」は「不都合」「支障」という意味の男性名詞です。 

「de remettre à plus tard」

「de」は前置詞、「remettre」は動詞の原形で「~を~に再び置く」「~を~に戻す」「再び身につける」という意味です。 

「plus tard」は、「後ほど」「後で」という意味です。 

「remettre ~ à plus tard」で「~を後に延ばす」「~を延期する」という意味になります。 

「son travail」

「son」は3人称単数男性形の所有形容詞で「彼の」「その」という意味です。 

同音異義語で、「音」という意味の男性名詞「son」もありますが、ここでは次に単数の男性名詞「travail」があるので、所有形容詞です。 

「travail」は「仕事」「勉強」「(芸術などの)作品」という意味があります。 

背景を見てみると

王子さまの星には恐ろしい種が存在しており、それはバオバブの種でした。 

バオバブは、早期の対処を怠ると巨大化してしまい、最悪の場合には星の滅亡につながります。 

今回のフレーズの後で王子さまは他の星で起こった恐ろしい話しを始めるのですが、その前にバオバブのように恐ろしくはない場合についての話しをしています。 

似た形の反対語はなし!

さて、冒頭で「inconvénient」がラテン語由来であること、元の単語の反対語(対義語)であることはご紹介しました。 

混乱の元になるので、ここではラテン語は扱いませんが、フランス語・英語とも、語頭に「in-」「im-」がつくと、反対の意味になることがほとんどです。 

「不都合」「支障」という意味の「inconvénient」も、元のラテン語に「in-」がついた形です。 

でも「inconvénient」から「in-」を取った形のフランス語は、存在しないのです。 

不思議ですよね~! 

なので「inconvénient」から「in-」を取っても、「都合」という意味にはならないので、くれぐれもご注意ください! 

「inconvénient」

では、「都合」に相当するフランス語は何かというと、ラテン語の同じ単語由来のフランス語に「convenance(適切/礼儀/都合)」があります。 

でも、「convenance(適切/礼儀/都合)」の反対語(対義語)は「inconvénient」ではありません。 

「convenance(適切/礼儀/都合)」に「in-」をつけた「inconvenance(不適切/無礼)」が反対語(対義語)です。 

この3つのフランス語と、元のラテン語との関係はこうなります: 

不都合な都合?

ここで3つのフランス語の意味を再確認します。 

  • 「convenance(適切/礼儀/都合)」 
  • 「inconvenance(不適切/無礼)」 
  • 「inconvénient(不都合/支障)」 

すると、「convenance」の訳に「都合」があり、「inconvénient」の訳に「不都合」があるので、どうしてもこの2つが反対語(対義語)に見えてしまいます。 

でもこれは、どちらかと言うと日本語の問題です。 

というのも、日本語の「都合」や「不都合」の意味に幅があるためなのです。 

3つの言葉の違いとは?

そのため、3つのフランス語の意味を深掘りします。 

  • 「convenance」礼儀や社会的・個人的な適切さを表す。「社会的な礼儀」「(都合のいい日などの)都合」 
  • 「inconvenance」礼儀や社会的な規範に反すること。「(行動や発言などの)不適切さ」 
  • 「inconvénient」特定の状況や物事に伴う不便さ・不利益・欠点など。「(不便という意味での)不都合」 

「inconvénient」には礼儀に関する意味はなく、どちらかと言うと「デメリット」に近いニュアンスです。 

前半の意味

最後に今回のフレーズを振り返っておきます。 

まず最初の「il est quelquefois sans inconvénient」の部分ですが、「sans」が「~なしに」という意味なので、「sans inconvénient」は事実上の二重否定になっています。 

そして「il」は意味を持たないので、本来の主語はこの後の部分にあります。 

なのでこの部分は「~は時として支障をきたさない」という意味になります。 

後半の意味

そして本来の主語である残りの部分「de remettre à plus tard son travail」は、「remettre ~ à plus tard」に「~を後に延ばす」「~を延期する」という意味があるので、「彼の仕事を先延ばしにする」になりそうです。 

ただしここでの「son travail」を「彼の仕事」にしてしまうのは残念です。 

というのも、背景にある「バオバブは、早期の対処を怠ると、最悪の場合には星の滅亡につながる」ということを念頭に入れると、「やらなければならないこと」であるとわかるからです。 

不都合な「都合」?

なので今回のフレーズは、「やらなければならないことを先延ばしにしても、時として支障をきたさない(ことがある)」という意味になります。 

日本語の「都合」という言葉にはいろいろな意味があるので便利な反面、この言葉にこだわりすぎると、フランス語の意味を取り違えてしまうという「不都合」も生じますね! 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

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