3つはひどい!
今回のフレーズにある「auxquels」は、3つの単語がつながったものです。
2つまではまだしも、3つの単語をくっつけるなんて…。
できるだけシンプルにして、ご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「auxquels ils ressemblent beaucoup」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の中ほどにあります。
第5章2枚目の挿絵から3つ目にあるフレーズの一部で、王子さまのセリフです。
「auxquels ils ressemblent beaucoup」
「auxquels」は後述します。
「ils」は「彼ら」「それら」、「ressemble」は「ressembler」の活用形(現在形)です。
「ressembler à ~」の形で「(人・モノ・事柄が)~に似ている」という意味になります。
ここでの「beaucoup」は動詞の強調語で、「大いに」「非常に」という意味です。
背景を見てみると
語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。
地上にいる私たちからは見えない、土の中に眠っている種には、よい植物のよい種と、悪い植物の悪い種があります。
王子さまの星には、恐ろしい種が存在しており、それはバオバブの種でした。
バオバブへの対処を怠れば、最悪の場合には星の滅亡につながってしまいます。
今回扱うのは長いフレーズの中ほどの部分で、王子さまの気づきについて語られています。
フレーズの全体は:
「Il faut s’astreindre régulièrement à arracher les baobabs dès qu’on les distingue d’avec les rosiers auxquels ils ressemblent beaucoup quand ils sont très jeunes.」
ここでの「ils」
「auxquels」をご紹介する前に、今回扱う部分の主語である「ils」について確認しておきます。
「ils」は複数男性形なので、男性名詞の複数形を指しています。
具体的には、このフレーズの始めの部分にある「les baobabs(バオバブ)」のことです。
「auxquels」について
では「auxquels」についてご紹介しますが、冒頭で触れた通り、これは3つもの単語がつながった形なので、一筋縄ではいきません。
分解した方が、わかりやすくなります。
まず分けられるのは、「aux」+「quels」ということです。
「quel」の変化
ここまでお話しすれば、このブログをよく読んでくださっている方なら、疑問形容詞の「quel」を思い出されたかもしれません。
このシリーズの第121回でまとめていて、形容詞なので変化するということにも触れています。
復習してみましょう!
男性形 | 女性形 | |
単数 | quel | quelle |
複数 | quels | quelles |
定冠詞 +「quel」
そしてなぜか「quel」の前に定冠詞がつくと、関係代名詞に変身します。
基本の形は単数男性形なので、「le」+「quel」=「lequel」です。
ただしせっかく名詞の仲間である関係代名詞になったのに、なぜか形容詞と同じく性・数で変化するという厄介さからは逃げられません。
「quel」の変化はそのままに、語頭にそれぞれ「le」「la」「les」の定冠詞がつく形になります。
「lequel」の変化をまとめます。
男性形 | 女性形 | |
単数 | lequel | laquelle |
複数 | lesquels | lesquelles |
前置詞までプラス!
「quel」の前に定冠詞がついただけでもおなか一杯なのに、さらに前置詞までくっついた形が存在します。
こちらも「lequel」などと同様に関係代名詞扱いです。
今回のフレーズにある「auxquels」はこの仲間です。
前置詞 + 定冠詞
まず「前置詞」+「定冠詞」の部分をご紹介します。
- 単数男性形「à + le = au」
- 単数女性形「à + la」(そのまま)
- 複数形男女「à + les = aux」
前置詞 + 定冠詞 +「quel」
では、最終形態の前置詞 + 定冠詞 +「quel」にすべく、出来上がった「前置詞 + 定冠詞」である、「au」「à la」「aux」を「quel」の変化に合わせて重ねていきます。
こちらも基本の形は単数男性形なので、「au」+「quel」=「auquel」です。
「auquel」の変化をまとめます。
男性形 | 女性形 | |
単数 | auquel | à laquelle |
複数 | auxquels | auxquelles |
「auquel」の注意点
今回のフレーズにある「auxquels」は、前置詞の「à」に定冠詞と「quel」がついた「auquel」の複数男性形だということが、わかっていただけたでしょうか?
「auquel」の変化の注意点としては、単数女性形は「à + la」のままなので、「à」が離れたままになっていることが挙げられます。
また複数形の場合、前置詞と定冠詞だけなら性に関係なく同じ形の「aux」になるのに、「quel」の部分の変化の仕方が違うので、語頭は一緒でも語尾は変わるということです。
なぜ前置詞まで?
今回のフレーズの「auxquels」について、元になっている3つの単語と変化の仕方については、お分かりいただけたと思います。
でもそもそも、定冠詞はともかく、なぜ前置詞まで関係代名詞に盛り込まなければいけないのか、と思いませんか?
この点に関しては、私も本当にそう思うのですが、今回扱う部分をよく見ると、ほんの少し納得できます。
というのも、「auxquels ils ressemblent beaucoup」の動詞「ressemble」は「ressembler」の現在形であり、「ressembler à ~」の形で「(人・モノ・事柄が)~に似ている」という意味になるからです。
つまり「auxquels」に含まれている「à」とは、「ressembler à ~」の中の「à」なのです。
「auxquels」の意味
最後に、今回のフレーズの「auxquels」の意味について考えます。
先ほども触れた通り、今回の部分の主語である「ils」は「les baobabs(バオバブ)」のことです。
今回扱う「auxquels ils ressemblent beaucoup」の「auxquels」以外の意味は「それら(バオバブ)に非常に似ている」になります。
そして「auxquels」は、「ressembler à ~(~に似ている)」の「à」がついた、男性名詞の複数形を受けています。
今回のフレーズにある「les baobabs(バオバブ)」以外の男性名詞の複数形と言えば、「les rosiers(バラの木)」で、「auxquels」はこれを受けています。
ただし関係代名詞なので、和訳するとあまり意味を持たないことが多いです。
なので今回扱う部分は、「(バラの木は)それら(バオバブ)に非常に似ている」ということになります。
これがフランス語!
できるだけシンプルにするために、3つも繋がった単語を分解することになり、長くなってしまいました。
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございました。
冠詞だけならともかく、それに加えて前置詞まで含まれているなんて、「何もそこまでして、中に入れ込まなくても!」と思いませんか?
本当に「くっつけるのはヤメテ!」と言いたい気分になりますが、これがフランス語です。
あきらめて覚えるしかないのです…。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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