ポイントを押さえて覚えよう!
今回は「il s’agit」を扱います。
フランス語独特と言われて、難しいと感じる方が多いのですが、あまり深く考えすぎない方がいい場合が多い表現です。
その理由や、覚えるべきポイントをご紹介します!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「S’il s’agit d’une brindille de radis ou de rosier, on peut la laisser pousser comme elle veut.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の中ほどにあります。
第5章2枚目の挿絵の直前にある段落にあるフレーズで、語り手の男性の説明部分です。
「s’il s’agit d’une brindille de radis ou de rosier」
「s’il」は「もしも」を表す「si」の省略形「s’」と人称代名詞3人称単数の「il」が合わさったものです。
「s’agit」は再帰代名詞「se」の省略形「s’」と「agir」の活用形(現在形)「agit」が合わさった代名動詞ですが、詳細は後述します。
「d’une」は前置詞「de」の省略形「d’」と不定冠詞女性単数の「une」が合わさったものです。
「brindille」は女性名詞で「小枝」、「radis」は男性名詞で「ラディッシュ」「(ある種の)大根」、「rosier」は男性名詞で「バラの木」です。
「ou」は「または」「あるいは」という意味です。
「on peut la laisser pousser」
「on」特殊な人称代名詞で、主語としての「人」を表すのが基本的な働きです。
詳細はこのシリーズの第93回を参照してください。
「peut」は、「pouvoir」の3人称単数現在の活用形です。
「pouvoir +(動詞の原形)」で、「~することができる」「~してもいい」という意味になります。
「pouvoir」についている動詞の原形「laisser」は「~を残す」「~を放置する」「~を~に置き忘れる」「~と別れる」など、いろいろな意味で使われます。
ただしここでは「laisser +(目的語)+(動詞の原形)」という形で、「~が~するのを放っておく」という表現になっています。
「la」は代名詞目的格、動詞の原形部分には「pousser」が使われています。
目的語を伴なう時は「~を押す」という意味ですが、目的語がないと「(草・歯などが)生える」「(髪が)伸びる」「(植物が)育つ」という意味になります。
「comme elle veut」
ここでの「comme」は「~のように」「~のような」という意味です。
「elle」は人称代名詞3人称単数、「veut」は動詞「vouloir」の活用形(現在形)です。
人が主語で、「~を望む」「~を欲する」という意味です。
背景を見てみると
王子さまは、自分の星のバオバブの木について話しました。
それに関連し、語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。
地上にいる私たちには目に見えないが、土の中に植物の種は眠っていて、時が来ると目を覚まし、小さな枝を遠慮がちに伸ばします。
今回のフレーズからは、生えたばかりの植物に対する注意点が語られます。
代名詞について
今回のフレーズには、「il」「on」「la」「elle」という代名詞があります。
まず、この4つについて考えます。
「il」については、「il s’agit」という表現の一部で、意味を持たない使い方です。
「on」は主語になること、人であることだけが約束されている以外は、いろいろな意味になる代名詞ですが、ここでは単に「(一般的な)人」として使われています。
「la」は直接目的、「elle」は主語になる人称代名詞ですが、この2つは同じものを指しています。
このフレーズの中にある女性名詞、「une brindille(小枝)」が目的語として使われているのが「la」であり、主語として使われているのが「elle」です。
内容を確認
「il s’agit」という表現を考える前に、このフレーズの他の部分の内容を確認しておきます。
「une brindille de radis ou de rosier」で「ラディッシュやバラの木の小枝」になります。
「on peut la laisser pousser」では「la」が「小枝」のことなので、「それ(小枝)を生えるままにしておける」に。
「comme elle veut」の「elle」も「小枝」のことなので、「それ(小枝)の望むように」ということです。
なお、「il s’agit」の前には省略形ではあるものの、「si」があるのでそれを加味すると、「si + une brindille de radis ou de rosier」で「もしもラディッシュやバラの木の小枝なら」になります。
「il s’agit」について
先ほど、「il s’agit」の「il」は意味を持たないこと、「s’agit」は再帰代名詞「se」の省略形「s’」と「agir」の活用形(現在形)「agit」が合わさった代名動詞であることをご紹介しました。
ここからは、独特だと言われる「il s’agit」について、まとめます。
ただし結論から言ってしまうと、この表現にはほとんど意味がないことも多く(まったく意味がないわけではありません)、今回のフレーズでの使い方は、これに当たります。
代名動詞だけど…
「s’agit」の部分は、再帰代名詞を伴なった代名動詞なので、まずは再帰代名詞を除いた動詞としての意味から見ていきます。
この動詞の原形は「agir」で、主語が人の場合は「行動する」「振る舞う」、主語がモノの場合は「sur ~」を伴なって「~に作用する」「(薬や毒が)~に効く」という意味です。
…というのが定番の説明で、この通り以上でも以下でもないのですが、「il s’agit」を考える場合には、この動詞「agir」の意味は忘れることをおススメします。
他の代名動詞と違い、まったく意味が違うので、混乱の元になってしまうからです。
このことが、「難しい」と言われる原因の1つかもしれません。
「il s’agit de ~」
さて、前置きが大変長くなってしまいましたが、本題に入ります。
「s’agit」という代名動詞は「il s’agit de ~」という形で使われることがほとんどです。
意味をまとめて、1つずつご紹介します。
- 「~に関することだ」
- 「~が問題だ」
- 「~することが重要だ」
- 「~だ」
1.「~に関することだ」
「il s’agit de ~」が「~に関することだ」という意味になることがよくあります。
「il s’agit de ~」だけでも使われますが、「いつ」などの意味の「quand」と一緒に「quand il s’agit de ~」になると、「~に関するときには」「~に関して言うと」という意味であることがほとんどです。
2.「~が問題だ」
「il s’agit de ~」が「~が問題だ」という意味になることもあります。
「il s’agit de ~」だけで使われるので、1の「~に関することだ」との区別が難しいこともあるのですが、文脈で判断するしかありません。
3.「~することが重要だ」
「il s’agit de +(動詞の原形)」という形だと「~することが重要だ」という意味になります。
この場合は動詞の原形があるかどうかを見ればわかるので、他の意味よりは見分けやすいです。
4.「~だ」
「il s’agit de ~」がただ単に「~だ」という意味になることもよくあります。
これが先ほどお伝えした「ほとんど意味を持たない」使い方です。
この場合は「il s’agit de」の部分を「c’est」に置き換えることができます。
今回のフレーズの「il s’agit」
今回のフレーズの前半部分「s’il s’agit d’une brindille de radis ou de rosier」 がこれに当たります。
なので「il s’agit de」の部分を「c’est」に置き換えてみると、「si c’est une brindille de radis ou de rosier」になります。
意味も「もしもラディッシュやバラの木の小枝なら」になり、残りの部分を合わせてみても違和感がありません。
なので今回のフレーズの全体としては、「もしもラディッシュやバラの木の小枝なら、それが望むように生えるままにしておける」ということです。
「il s’agit」のポイント
こうして見てくると、元の動詞「agir」の「行動する」などの意味からは程遠いことがわかりますよね?
「il s’agit」を見たら、まずは動詞の原形がついているかどうかを確認するのが、最初のポイントです。
動詞の原形が見当たらない場合は、「il s’agit de」の部分を「c’est」に置き換えられるかどうかが、次のポイント。
この2つだけで、上記3や4に相当するかどうかがわかります。
そしてこの2つが当てはまらないなら、文脈から判断して、1になるのか、2になるのかを考えます。
やっかいに思えるかもしれませんが、かなりの確率で「ほぼ意味のない4」になるので、あまり深く考えすぎずに慣れることを意識してみてくださいね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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