想像力を味方に!
今回のキーワードは「pousser」です。
一見かけ離れた、いろいろな意味がある動詞のように感じるかもしれません。
でも今回のフレーズの主人公になったつもりになると、意外とすんなり覚えられますよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Alors elle s’étire, et pousse d’abord timidement vers le soleil une ravissante petite brindille inoffensive.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の中ほどにあります。
第5章2枚目の挿絵の直前にある段落にあるフレーズで、語り手の男性の説明部分です。
「alors elle s’étire」
「alors」は「その時」「それなら」「それだから」など、「elle」は人称代名詞3人称単数です。
「s’étire」は「se」の省略形「s’」と動詞「étirer」の活用形(現在形)「étire」が合わさったものです。
ただしここでの「se」の省略形「s’」は、人称代名詞目的格ではありません。
「自分を」「自分に」と訳すことで解決する使い方で、詳細は第140回を参照してください。
「étirer」は「(金属などを)引き伸ばす」「(手足を)伸ばす」という意味ですが、「s’étirer」で「(自分を)伸ばす=伸びをする」になります。
「et pousse d’abord timidement vers le soleil」
「et」は「そして」、「pousse」は「pousser」の活用形(現在形)です。
目的語を伴なう時は「~を押す」という意味ですが、目的語がないと「(草・歯などが)生える」「(髪が)伸びる」「(植物が)育つ」という意味になります。
「d’abord」は「まず最初に」、「timidement」は「遠慮がちに」「はにかんで」という意味です。
「vers」には3つの意味があります。
1つ目は方向で「~の方に」「~に向かって」、2つ目は場所で「~の辺りに」「~の付近で」、3つ目は時間で「~頃に」です。
「le」は定冠詞男性単数、「soleil」は「太陽」「日光」「日差し」を意味する男性名詞です。
「une ravissante petite brindille inoffensive」
「une」は不定冠詞女性単数、「ravissante」は「(人やモノが)うっとりするほど美しい」「すばらしい」という意味の「ravissant」の女性形、「petite」は「小さい」「幼い」「かわいい」などの意味の「petit」の女性形です。
「brindille」は女性名詞で「小枝」、「inoffensive」は「無害な」「毒のない」という意味の「inoffensif」の女性形です。
背景を見てみると
王子さまは、自分の星のバオバブの木について話しました。
それに関連し、語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。
地上にいる私たちには目に見えないが、土の中に植物の種は眠っていて、時が来ると目を覚ますのだと言います。
今回のフレーズは、植物の種が目覚めたすぐ後の様子についてです。
主語は?
さて、まずは主語について考えます。
背景からわかる通り、今回のフレーズの主語である「elle」とは、「(植物の)種」のことです。
「種」は「les graines」なので複数形なのですが、このフレーズの直前で「l’une d’elles(それらのうちの1つ)」が「目を覚ました」という表現があります。
このフレーズの主語「elle」とは、「目を覚ましたばかりの1粒の種」のことです。
ちなみに、女性形代名詞の「elle」が使われているのは、「graine(種)」が女性名詞だからです。
「pousser」について
先ほど動詞の「pousser」の意味を、目的語を伴なう場合は「~を押す」、目的語がない場合は「(草・歯などが)生える」「(髪が)伸びる」「(植物が)育つ」とご紹介しました。
これが辞書に書いてある内容です。
いろいろな意味があるように見えますが、大きく分けると目的語のあるなしで変わることにお気づきでしょうか?
目的語があれば「押す」、目的語がなければ「生育する」という意味になるということです。
なので、目的語があるかどうかを確認するのが、辞書通りに解釈する際のポイントです。
内容を確認
今回のフレーズには形容詞がいくつもあり、少々長いので、内容を確認しておきます。
「elle」が「目を覚ましたばかりの1粒の種」のことなのですから、「alors elle s’étire」は「その時、目を覚ました種は伸びをする」ということになります。
「et pousse d’abord timidement vers le soleil」は「そしてまずおひさまに向かって遠慮がちに」+「pousser」ということに。
「une ravissante petite brindille inoffensive」は「ステキでかわいらしく無害な小枝」という意味になります。
目的語は?
そしてこの「une ravissante petite brindille inoffensive(ステキでかわいらしく無害な小枝)」という部分が、「pousser」の目的語ということになります。
とすると、今回のフレーズの「pousser」は「~を押す」という意味だというのが、辞書通りの解釈です。
でも実際は「生育する」という意味そのものですよね?
和訳するなら、「押す」という表現にはならないはずです。
「pousser」のイメージ
「押す」と「育つ」では、意味がかけ離れているように思えるかもしれませんが、今回のフレーズの主語「elle」になったつもりになると、イメージが変わるかもしれません。
つまり、あなたは「目を覚ましたばかりの1粒の種」であり、伸びをします。
そしてまず、おひさまに向かって遠慮がちに、ステキでかわいらしく無害な小枝を伸ばします。
…この「伸ばす」というのは、「(地面の下から)押し上げる」ということですよね?
これこそが「pousser」という動詞の持つイメージです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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