244 クレヨンは買っていない件 C’est donc pour ça encore que j’ai acheté une boîte de couleurs et des crayons.

名詞

クレヨンではない?

「クレヨン」と言えば、小さな子供がお絵描きに使うものですよね? 

今回のフレーズには、元になったフランス語の「crayon」がありますし、それを買ったという表現もあります。 

でも実際は、クレヨンを買ったわけではありません。 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「C’est donc pour ça encore que j’ai acheté une boîte de couleurs et des crayons.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第4章の終わりにあります。 

第4章最後の段落の8つ目にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。 

「c’est donc pour ça encore」

「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、「être」の活用形(現在形)「est」が合わさってできています。 

「donc」は「それゆえ」「したがって」という意味です。 

「pour」は前置詞で、いろいろな意味を持つのですが、「~のために」「~の理由で」「~にとっては」などが代表的です。 

「ça」は代名詞で、本来は「あれ/それ」を意味する「cela」の話し言葉です。 

「encore」は、「まだ」「相変わらず」「また」「もっと」などを意味します。 

外来語の「アンコール」は、このうちの「もっと」の意味で使われますが、フランス語の「encore」は、そのほかの意味で使われることの方が多いです。 

「que j’ai acheté」

「que」については、後述します。 

「j’ai」は「わたし」という意味の「je」の省略形「j’」と、「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。 

「acheté」は「~を買う」という意味の「acheter」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。 

「une boîte de couleurs et des crayons」 

「une」は定冠詞単数女性形、「boîte」は女性名詞で「箱」という意味です。 

「de ~」で「~の」、「couleurs」は「色」「(絵具やペンキなどの)色のあるもの」という意味の女性名詞「couleur」の複数形です。 

「et」は「そして」、「des」は不定冠詞複数形、「crayons」は「鉛筆」という意味の男性名詞「crayon」の複数形です。 

背景を見てみると

子どもの頃から大人に対して批判的な語り手の男性ですが、自分自身も大人であり、それを自覚しているようです。 

語ること自体が悲しいお話しをあえてするのは、王子さまという友だちを忘れないため。 

今回のフレーズでは、そのためにまず男性がしたことについて、話しています。 

いろいろな「que」

ここでの「que」には「?」や「!」がないので、関係代名詞か接続詞です。 

また、他の単語とともに特別な意味を持っているわけでもありません。 

そこで、「que」の後の節(小さなフレーズ)が完結しているかどうかを見ます。 

すると節は完結しているので、関係代名詞ではなく、接続詞です。 

「donc」と「encore」について

「c’est donc pour ça encore」の部分を見ると、いろいろな意味があって混乱するかもしれませんね。 

混乱の原因は、「donc(それゆえ/したがって)」と「encore(まだ/相変わらず/また/もっと)」の2つ。 

背景からわかる通り、ここで男性が大切の思っているのは、王子さまという友だちを忘れないということです。 

なので言いたいのは「そのために」ということ。 

これに当たるのが「c’est pour ça」の部分です。 

「donc」と「encore」に関しては、意味がないわけではないのですが、実際に和訳してみると、「c’est donc pour ça encore」は「そこで」になるかもしれません。 

特に和訳する必要はないのですが、「donc」と「encore」に文脈上で重要な意味はないということです。 

間違った省略

さて先ほどもご紹介した通り、フランス語の「crayon」は「鉛筆」という意味です。 

日本語の「クレヨン」に当たるフランス語は、「crayon de cire」または「craie de cire」です。 

「cire」は「みつろう」や「ワックス」のこと、「craie」はそのまま使うと「チョーク」のことです。 

外来語として取り入れる際に、「crayon de cire」の「crayon」だけを抜き取って「クレヨン」にしたものの、元のフランス語では別の意味だった、ということです。 

同様の例がフランスでも!

これに似たフランス語に「maki」があります。 

日本語由来の外来語ですが、「真紀さん」のような、女性の名前ではありません。 

「カッパ巻き」「鉄火巻き」「カリフォルニアロール」などの「巻きずし」「巻きもの」のことを、フランス語で「maki」と呼んでいるのです。 

「巻きずし」だと長いうえ、「makizushi」と表記すると「sushi」が「zushi」になってしまって意味が分からなくなってしまうので、「maki」にしたのでしょうね。 

日本語の「クレヨン」ほどの違いがないので、インパクトは薄いですが、この言葉を目にした当初は、かなり気になっていました。 

フランス人が日本で「クレヨン」を見れば、やはり気になるのではないかと思います。 

買ったものは?

そして「une boîte de couleurs」は、直訳すると「(複数の)色のあるモノの箱」ですが、これは「ひと箱の色鉛筆」のことです。 

色鉛筆は本来「crayons de couleur」と言いますが、「色鉛筆と鉛筆」を正確に言うと、「une boîte de crayons de couleurs et des crayons」 になってしまいます。 

「crayon(鉛筆)」という単語の繰り返しを嫌って、このように表現にしたのではないかと思います。 

王子さまという友だちを忘れないためにしたことの第一は、色鉛筆と鉛筆を買ったことだったのです。 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

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