どうすれば感情を表現できる?
動詞「aller」は「行く」という意味ですが、今回のフレーズでの使い方には感情がこもっています。
単なる移動である「aller(行く)」という単語を使いながらも、感情ある言い方にするには何が必要なのかをご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il y a six ans déjà que mon ami s’en est allé avec son mouton.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の終わりにあります。
第4章最後の段落の3つ目にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。
「il y a six ans déjà」
「il y a ~」の形で「ある」「いる」などの意味です。
基本的には、人・モノの存在を表します。
「six」は、数字の「6」、「ans」は男性名詞「an」の複数形で「年」を表します。
「déjà」は「すでに」の意味です。
「que mon ami s’en est allé avec son mouton」
ここでの「que」は接続詞、「mon」は所有形容詞1人称単数で「わたしの」、「ami」は「友人」という意味の男性名詞です。
「s’en」は「se」の省略形「s’」と、前置詞の「en」が合わさったものです。
「est」は「être」の活用形(現在形)、「allé」は「行く」という意味の「aller」の過去分詞です。
「avec」は「~と一緒に」「~を持って」「~を使って」などです。
「son」は「彼の」「それの」、「mouton」は「羊」を意味する男性名詞です。
なお「s’en est allé」の発音は、「s’en」の語尾の「n」と「est」を合わせて発音しますし、「est」の語尾で単独なら発音されない「t」が「allé」の「a」と一緒に発音されるので、「s’en est allé」が一気に、まるで一語であるかのように発音します。
背景を見てみると
王子さまの星はとても小さいということがわかり、そしてその星はおそらくB612という小惑星だと、語り手の男性は考えています。
あまりにも悲しいこのお話しは、本当はおとぎ話のように始めたかった、そして軽々しく読んで欲しくないと、男性は言っています。
今回のフレーズでは、改めて時間が経っているということを強調しています。
「17の変わり者動詞」
さて、以前からこのブログを読んでくださっている方ならお気づきかもしれませんが、「aller」は「17の変わり者動詞」の1つです。
「17の変わり者動詞」というのは、私が勝手に命名したものですが、過去を表す時に「être」を使う17の動詞のことです。
ここでは「est allé」になっているので、「être +(動詞の過去分詞)」で過去表現になっています。
感情のこもった言い方にするには?
なお先ほど、今回のフレーズにある「allé」は「行く」という意味の「aller」の過去分詞だとお伝えしました。
でもこれは、半分不正解です。
「aller」を単独で使えば「行く」なのですが、今回のフレーズでは「s’en aller」の形になっているからです。
実は、この「s’en aller」こそが、冒頭で触れた「感情のこもった言い方」です。
辞書には「立ち去る」「出ていく」ぐらいしか書いていないことがほとんどですが、「立ち去る」「出ていく」だけでは言い表せない、気持ちが感じられる表現です。
残念に思う気持ち
今回のフレーズでは、「mon ami(私の友人)」つまり王子さまが「s’en est allé」と言っています。
背景からわかる通り、男性はとても悲しんでいるので、「s’en est allé」を単に「出て行った」にするのでは、少し物足りません。
「行ってしまった」ぐらいの残念に思う気持ちが込められていると思っています。
今後も登場!
この「s’en aller」という言い方は、「s’en est allé」という過去表現だけでなく、形を変えていろいろな場面でよく使われます。
『星の王子さま』でも、この後で何度か登場しますので、またご紹介しますね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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