フランス語の『星の王子さま』
多くの言語に翻訳されて、世界中で愛されている『星の王子さま』ですが、やはり作者の母国語であるフランス語で読むと、細かなテクニックが感じられることがあります。
今回のフレーズも、そのうちの1つ。
ぜひ、フランス語で味わってくださいね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Ah !…」と「Il n’y a donc personne sur la Terre ?」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第17章の始めの方にあります。
1枚目の挿絵の直後にあるフレーズで、王子さまのセリフです。
「Ah !」
「ah !」は間投詞、「ああ!」で、喜びや驚きなどを表します。
日本語に近い表現ではあるのですが、3回繰り返して使われることがあります。
ここでは1回だけで、これが本来の使い方だと思います。
「il n’y a」
「il n’y a ~」は、 「il y a ~」の否定形です。
「il y a ~」で「ある」「いる」などの意味なので、「il n’y a ~」で「ない」「いない」になります。
「il」
「il」は3人称代名詞単数で、「彼」を表すのですが、モノやコトを受けて「それ」の意味になることもあります。
場合によっては特に意味を持たないこともあり、今回の使い方もそれに当たります。
「n’y」
否定の「ne」と、代名詞の「y」が合わさった形です。
本来の「y」は「そこ」などの意味ですが、ここでの「y」は意味を持たず、「il y a ~」という、決まった形の一部であるだけです。
「a」
「a」は、動詞「avoir」の直説法現在3人称単数の活用形です。
「il y a ~」の形で使うなら、後ろに複数形が来ても「a」のままです。
ただし時制は変化するので、過去形や未来形への変化はあり得ます。
「donc」
「donc」は、「つまり」「要するに」などの意味の副詞です。
「personne」
女性名詞で「人」です。
「Il n’y a personne」で「誰もいない」になります。
「sur」
「sur」は、「~の上に」「~に関して」などの意味です。
「信頼できる」「安全な」「確かな」などを意味する形容詞「sûr」には、「^」がついて異なります。
「la Terre」
「la」は、定冠詞女性・単数です。
「terre」は女性名詞で、「大地」「地面」「土」などの意味がありますが、最初を大文字、つまり「Terre」にすると、「(惑星としての)地球」という意味になります。
今回のフレーズは「Terre」になっているので、「地球」という意味です。
背景を見てみると
地球にやってきたものの、誰もいないので、今いる場所が本当に地球上なのかが不安だった王子さま。
近くにいたヘビと話すことになり、そこがアフリカだと教えてもらいます。
それに対するリアクションが、今回のフレーズです。
語順で意味が変わる?
ところで、「donc(つまり・要するに)」という副詞は、語順に関して自由度が高いようです。
日本語同様に、フレーズの先頭に置かれるのがスタンダードなのですが、今回のように文中で使用されることがあります。
このように文中に置かれる場合、自然と「donc」にアクセントがつくことになり、意味が変わるというほどではないのですが、若干ニュアンスが変わります。
このフレーズなら、「人がまったくいない」という意味が強まるのです。
もしこのフレーズが「Donc il n’y a personne sur la Terre ?」なら、「要するに」の部分が強調されるので、やはり作者のテクニックが感じられる部分ではありますね。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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