90 作者のテクニックがこんなところにも! Ah !… Il n’y a donc personne sur la Terre ?

その他(王子さま)

フランス語の『星の王子さま』

多くの言語に翻訳されて、世界中で愛されている『星の王子さま』ですが、やはり作者の母国語であるフランス語で読むと、細かなテクニックが感じられることがあります。 

今回のフレーズも、そのうちの1つ。 

ぜひ、フランス語で味わってくださいね! 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Ah !…」と「Il n’y a donc personne sur la Terre ?」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第17章の始めの方にあります。 

1枚目の挿絵の直後にあるフレーズで、王子さまのセリフです。 

「Ah !」 

「ah !」は間投詞、「ああ!」で、喜びや驚きなどを表します。 

日本語に近い表現ではあるのですが、3回繰り返して使われることがあります。 

ここでは1回だけで、これが本来の使い方だと思います。 

「il n’y a」 

「il n’y a ~」は、 「il y a ~」の否定形です。 

「il y a ~」で「ある」「いる」などの意味なので、「il n’y a ~」で「ない」「いない」になります。 

「il」 

「il」は3人称代名詞単数で、「彼」を表すのですが、モノやコトを受けて「それ」の意味になることもあります。 

場合によっては特に意味を持たないこともあり、今回の使い方もそれに当たります。 

「n’y」 

否定の「ne」と、代名詞の「y」が合わさった形です。 

本来の「y」は「そこ」などの意味ですが、ここでの「y」は意味を持たず、「il y a ~」という、決まった形の一部であるだけです。 

「a」 

「a」は、動詞「avoir」の直説法現在3人称単数の活用形です。 

「il y a ~」の形で使うなら、後ろに複数形が来ても「a」のままです。 

ただし時制は変化するので、過去形や未来形への変化はあり得ます。 

「donc」 

「donc」は、「つまり」「要するに」などの意味の副詞です。 

「personne」 

女性名詞で「人」です。 

「Il n’y a personne」で「誰もいない」になります。 

「sur」 

「sur」は、「~の上に」「~に関して」などの意味です。 

「信頼できる」「安全な」「確かな」などを意味する形容詞「sûr」には、「^」がついて異なります。 

「la Terre」 

「la」は、定冠詞女性・単数です。 

「terre」は女性名詞で、「大地」「地面」「土」などの意味がありますが、最初を大文字、つまり「Terre」にすると、「(惑星としての)地球」という意味になります。 

今回のフレーズは「Terre」になっているので、「地球」という意味です。 

背景を見てみると 

地球にやってきたものの、誰もいないので、今いる場所が本当に地球上なのかが不安だった王子さま。 

近くにいたヘビと話すことになり、そこがアフリカだと教えてもらいます。 

それに対するリアクションが、今回のフレーズです。 

語順で意味が変わる? 

ところで、「donc(つまり・要するに)」という副詞は、語順に関して自由度が高いようです。 

日本語同様に、フレーズの先頭に置かれるのがスタンダードなのですが、今回のように文中で使用されることがあります。 

このように文中に置かれる場合、自然と「donc」にアクセントがつくことになり、意味が変わるというほどではないのですが、若干ニュアンスが変わります。 

このフレーズなら、「人がまったくいない」という意味が強まるのです。 

もしこのフレーズが「Donc il n’y a personne sur la Terre ?」なら、「要するに」の部分が強調されるので、やはり作者のテクニックが感じられる部分ではありますね。 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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