だから大人にも愛される作品
『星の王子さま』は、「童話」として扱われることが多いのですが、あらゆる場面を通して作者の考え方が伝わってくる作品です。
今回の短いフレーズも、そうした考え方が凝縮されたうちの1つです。
権力者としてのあるべき姿が伝わってきます。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Mais tu n’es pas utile aux étoiles…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第13章の終わりにあります。
第13章では、王子さまと、訪問先のビジネスマンとの会話が続きます。
今回のフレーズは王子さまのセリフです。
「mais」
「mais」の基本的な意味は「しかし」「けれど」で、逆説を表します。
「tu」
「tu」は2人称代名詞単数です。
意味は「あなた」「きみ」「おまえ」などですが、親しい間柄で使われます。
「n’es pas」
「n’es pas」は、「n’es」の部分が「ne」と「es」が合わさった形です。
「ne ~ pas」と「es」に分けてご紹介します。
「ne ~ pas」
もっとも一般的な否定文の形式です。
「~」の部分には、動詞が入ります。
「es」
英語の be動詞に相当する、être動詞の2人称単数「tu」の活用形。
意味は「~です」に当たります。
「utile」
「utile」は「役に立つ」という意味です。
「utile à ~」の形で「~の役に立つ」になります。
「aux」
「aux」は、「à」と、定冠詞複数の「les」が合わさってできています。
「étoiles」
「étoiles」は、「星」を意味する女性名詞の「étoile」の複数形です。
ここでは、「aux」の語尾の「x」と「étoiles」の先頭にある「é」が一緒に読まれるので、発音が変わります。
背景を見てみると
たくさんの星を持っているビジネスマンですが、その話しを詳しく聞いてみると、星の数を数えて紙に書き、その紙を銀行に預けるだけでした。
それに対して王子さまは、自分の持っている花には水をやり、火山は手入れをして大きな爆発が起きないようにしていると言います。
その後に続くのが、今回のフレーズです。
「tu」はビジネスマンを指し、「étoiles」は、ビジネスマンが持っているたくさんの星になりますね。
なので「星」は複数形になっています。
権力者の鏡!
王子さまの世界は、小さいながらも星単位のお話しですが、私たちの住む現実社会にも、王様や大統領・首相など、名まえは変わっても権力者たちがいます。
第13章のビジネスマンは、王様とオーナーは違うと言ってはいますが、権力があるということについては同じです。
王子さまは子どもなのに、統治者として君臨するだけではなく、役に立つからこそ、その上に君臨することが許されるということを、十分にわかっていることが分かるのが、今回のフレーズです。
それにしても、こんな立派な王子さまを育てたのは、誰なのでしょうね~?
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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