ここにもヘンな大人が!
『星の王子さま』という作品は、「ヘンな大人の見本市」という側面を持っているのではないでしょうか?
第1の星は偉ぶるだけの王様、第2の星は虚栄心のかたまりのような男が、それぞれひとりぼっちで暮らしているのですから。
地球上の私たちは多くの人々に囲まれていますが、権威や虚栄心は、何の役にも立たないと言われているようです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Mais tu es seul sur ta planète !」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第11章の終わりの方にあります。
第11章では、王子さまと、訪問先の見栄っ張りの男との会話が続きます。
今回のフレーズは、王子さまのセリフです。
「mais」
「mais」の基本的な意味は「しかし」「けれど」で、逆説を表します。
「tu」
「tu」は2人称代名詞単数です。
2人称代名詞単数と言うと、「あなた」「きみ」「おまえ」などですが、フランス語には2種類あり、そのうちの1つです。
2人称代名詞まとめ
フランス語の2人称代名詞をまとめます。
【tu】
- 親しい間柄で使われる
- 単数形のみ
- 複数になると、親しい間柄でも「vous」になる
【vous】
- 単数・複数の両方で使われる(同じ形)
- 単数の場合、ていねいな印象を与える
- 複数の場合は「tu」の複数も含まれる(相手との関係性が不明瞭になる)
「es」
英語の be動詞に相当する、être動詞の2人称単数「tu」の活用形。
意味は「~です」に当たります。
「seul」
「seul」は形容詞で、「唯一の」「ただ1人の」「ただ1つの」という意味です。
女性形は「seule」になりますが、発音は変わりません。
「sur」
「sur」は前置詞で、基本的な意味は「~の上に」「~の上の方に」です。
「ta」
「ta」は所有形容詞で、「あなたの」「きみの」「おまえの」などですが、人称代名詞の「tu」同様、親しい間柄で使われます。
所有形容詞2人称単数のまとめ
形容詞なので、後ろに来る名詞の性や数で変化するため、まとめます。
- 「ton」:男性名詞単数の前・母音で始まる女性名詞単数の前
- 「ta」:母音以外で始まる女性名詞単数の前
- 「tes」:男性/女性名詞複数の前
今回のフレーズの「ta」
「ta」は、単数の女性名詞の前で使われますが、母音で始まる名詞の前では、女性名詞であっても「ton」が使われます。
今回のフレーズは、次に来るのが女性名詞の「planète」で、母音で始まっていないことから、「ta」が使われています。
「planète」
「planète」は女性名詞で、「惑星」という意味です。
背景を見てみると
王子さまに拍手をせがみ、ほめ言葉以外は聞く耳を持たない、見栄っ張りな男。
今回のフレーズの直前で彼は、「自分が、この星で1番ハンサムで、ベストドレッサーで、1番お金持ちで、1番頭がいい」と言います。
その返事が今回のフレーズ、「Mais tu es seul sur ta planète !」です。
驚く王子さま
逆説の「mais」がついているのは、「世界で1番って言うけど」という意味が込められていますね。
そう、彼は訪ねてくる人などいない、小さな星にひとりぼっちで住んでいるので、王子さまが驚いて当たり前です。
なので今回のフレーズには、「!」がついています。
王子さまの旅は続く
自分の星も小さかったものの、王子さまの訪問先は「人口1名」の小さな星が続きます。
訪問先に子どもがいることはなく、毎回、大人たちの妙な執着心ばかりを見ることに。
そして訪問を終えるたび、「大人はヘンだ」とつぶやくのです。
そんな旅は、まだまだ続きます。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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