フランス語で読む醍醐味とは?
今回のフレーズは、背景や状況がわからない限り、決して理解できません。
たとえネイティブでも、不可解に感じてしまうに違いありません。
でも、フランス語の原文で読むからこそ、心のヒダに寄り添うような、不思議な感覚を味わうことができます。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「C’est tellement mystérieux, le pays des larmes.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第7章の終わりにあります。
第7章では、王子さまと語り手の男性の会話が続き、最後はバラの花の絵で終わっています。
このフレーズは第7章の最終フレーズで、語り手の男性のセリフです。
「c’est」
「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、英語の be動詞に当たる動詞 être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。
意味は「これ(それ・あれ)は~です。」
「tellement」
「tellement」は「それほどまでに」という意味ですが、強調として「実に」「本当に」という意味でも使われます。
「mystérieux」
「mystérieux」は「神秘的な」「ナゾの」「秘密好きな」という意味です。
女性形は「mystérieuse」で発音が変わります。
「le」
「le」は、文法上、定冠詞の男性・単数です。
語り手の男性にとっては「ある特定できる存在」なので、定冠詞が使われています。
「pays」
「pays」は男性名詞で、「国」「地方」「地域」「小さな村(町)」といった意味です。
「des」
この単語は「de」と「les」という、2つの単語が合わさってできています。
つまり「de + les = des」ということです。
「de」は「~の~」という意味ですが、「A de B」だと「BのA」なので、日本語とは語順が逆になります。
そして「les」は、定冠詞の複数形です。
「larmes」
「larmes」は、「涙」を意味する女性名詞「larme」の複数形です。
複数形で使われるのが普通です。
言葉のかたまりを見てみると
「C’est tellement mystérieux, le pays des larmes.」というフレーズには「,」がついているので、ここで2つに分けられるのは明白です。
「C’est tellement mystérieux」と「le pays des larmes」ということですが、「C’est ~.」というフレーズです。
つまり「le pays des larmes」(直訳だと「涙の国」)」が「tellement mystérieux」だと言っています。
「le pays des larmes」とは?
このフレーズのある第7章には、語り手の男性の飛行機が故障して5日目のことが書かれています。
飛行機の修理のメドが立たないなか、持っている飲み水の残りも少なく、男性は焦っています。
こうした状況にはお構いなく、王子さまは羊が大切なバラの花を食べてしまいはしないかと心配しているのですが、男性にとっては、それどころではありません。
そして2人の置かれた立場の違いは、王子さまを怒らせてしまいます。
語り手の男性が適当に答えてしまったせいで、王子さまは顔面蒼白になったり、顔を真っ赤にしたりしながら怒り、挙句に泣き出してしまいます。
男性は王子さまを抱きしめながら慰めるのですが、王子さまはなかなか泣き止みそうにはありません。
それが「le pays des larmes」なのです。
ここでの「tellement」と「mystérieux」
「tellement」は「それほどまでに」、強調として「実に」「本当に」という意味です。
「le pays des larmes」が「mystérieux」であることを考えると、「mystérieux」にかかる「tellement」は強調なので、「実に」「本当に」であると分かります。
そして「mystérieux」については、なぜ王子さまがそこまで怒って泣くのかを考慮する必要があります。
かけがえのない特別な花なので、羊に食べられるなど、あってはならないこと。
それを友人と認めた語り手の男性に適当にあしらわれたショックは、多少慰められたぐらいでは治まりません。
それを語り手の男性は「mystérieux」な「le pays des larmes」と表現したのですね。
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