ただ加えるだけ!
今回のフレーズには、あってもなくてもあまり意味が変わらないかのように見える部分があります。
でもこれを加えるだけで、ただ断定するだけのフレーズがあら不思議!
言い訳をする時にも使える、説得力のある言い方になってしまうのです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Si tu réussis à bien te juger, c’est que tu es un véritable sage.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の後半にある王様のセリフです。
「si tu réussis à bien te juger」
「si」は「もしも」、「tu」は「きみ」、「réussis」は「成功する」という意味の「réussir」の活用形(現在形)です。
「réussir à +(動詞の原形)」という形で「~するのに成功する」という意味になります。
「bien」は「よく」「正しく」「非常に」「本当に」など、「te」は2人称代名詞単数目的格「君を」「君に」、「juger」は動詞の原形で「(人を)裁く」「(人・物事を)判断する」という意味です。
「c’est que tu es un véritable sage」
「c’est」は「ce」の省略形「c’」と「être」の活用形「est」が合わさってできています。
ここでの「que」は、この後の節に欠けるモノがないので接続詞です。
「tu」は「きみ」、「es」は「être」の活用形(現在形)です。
「un」は不定冠詞単数男性形、「véritable」は形容詞です。
名詞の後ろについて「本当の」「実際の」「本物の」、名詞の前について「真の」「まったくの」などの意味になります。
「sage」は「賢者」「有識者」という意味の男女同形名詞です。
男性の賢者なら「un sage」、女性の賢者なら「une sage」になります。
つまり性によって冠詞は変わるものの、「sage」という部分は変わりません。
ただし複数なら、「des sages」のように語尾に「s」がつきます。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
王様は何にでも命令できるというので、王子さまは太陽に沈むように命じてほしいとお願いするのですが、結局は日没の時間まで待つことになるのだとわかります。
王子さまは退屈なのですぐにでも出発したいのですが、王様は王子さまを法務大臣にすると言います。
今回のフレーズは、王子さまを家来として引き留めておきたい王様が、王子さまを説得しようとしている部分です。
フレーズの前半部分
まず、いくつかの部分を見ておきます。
「si tu réussis à bien te juger」では、「réussir à +(動詞の原形)」という形で「~するのに成功する」という意味で、動詞の原形に「juger(~を裁く/~を判断する)」が使われています。
「réussir à juger」で「~を裁くのに成功する」になります。
目的語は「te(君を/君に)」、副詞の「bien」もあるので、「si tu réussis à bien te juger」で「もし君が君のことを正しく裁くのに成功するなら」というのが直訳になります。
フレーズの後半部分
後半部分では、形容詞「véritable」をどう捉えるのかが大切です。
フランス語の形容詞は、ほとんどが名詞の後に付きますが、「véritable」のような一部の形容詞は名詞の前・後ろの両方に付けられます。
語順が変わっても、大きく意味が変わらない形容詞もありますが、「véritable」の場合は前述通り変わります。
ここでは「un véritable sage」ということで、名詞の前についているので、「真の」「まったくの」などの意味になります。
つまり「tu es un véritable sage」の部分は「君は真の賢者だ」という意味だとわかります。
なくてもフレーズは成立
実は「Si tu réussis à bien te juger, tu es un véritable sage.」という形でも、フレーズは成立してしまいます。
「もし君が自らを正しく裁けるなら、君は真の賢者だ」という意味になり、文法的にも全く問題がありません。
では省略してしまった「c’est que」とは、何を意味するのでしょうか?
「c’est que」には理由や説明を強調する働きがあり、これをつけると説得力のあるフレーズになるのです。
あれば説得力アップ
つまり「c’est que」を入れた今回のフレーズ「Si tu réussis à bien te juger, c’est que tu es un véritable sage.」は、「もし君が自らを正しく裁けるなら、それは君が間違いなく真の賢者だということだよ」といったニュアンスになるのです。
ただ単に「c’est que」を加えるだけで、語順を変えるわけでもないのですが、かなり確信に満ちた説得力のある表現に生まれ変わりますよね!
言い訳に使える例
では、「c’est que」がない場合とある場合での違いを例文で見てみます。
- Je suis fatigué.
(わたしは疲れている)
- C’est que je suis fatigué.
(それはわたしが疲れているからなんだ)
- J’ai oublié mon portefeuille.
(わたしは財布を忘れた)
- C’est que j’ai oublié mon portefeuille.
(それはわたしが財布を忘れたからなんだ)
1と3は「疲れている」「財布を忘れた」という事実を述べているだけですが、「c’est que」のついた2と4は、理由や状況を説明していて、それを強調するトーンがあります。
ちょっと足すだけで言い訳や弁明に使えるので、覚えておいて損はありません!
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