繰り返しに留まらない
今回のフレーズにある「reposer」という動詞は、「置く」という意味の「poser」の前に「re-」が付いたものです。
「re-」には繰り返しの意味があるので、「reposer」の基本的な意味は「再び置く」なのですが、それだけではありません。
特殊でありながら、特徴的な使い方の「reposer」をご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「L’autorité repose d’abord sur la raison.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の中ほどにある王様のセリフです。
「l’autorité repose d’abord sur la raison」
「l’autorité」は定冠詞単数「le」または「la」の省略形「l’」と「権威」「権限」などの意味の女性名詞「autorité」が合わさったものです。
「repose」は「reposer」の活用形(現在形)です。
「reposer sur ~」の形で「(家などが)~の上に建てられている」「(事柄が)~に基礎を置く/基づく」などの意味になります。
「d’abord」は「まず最初に」という意味です。
「la」は定冠詞単数女性形、「raison」は「理性」「分別」「理由」などの意味の女性名詞です。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
何にでも自分の命令が通用すると思っている王様は、星が命令に従うのかどうかを王子さまに質問されて「すぐに従う」と答えます。
なので、日が暮れるのを見るのが好きな王子さまは、日没を王様にねだるのですが、逆に王様に質問されて答えます。
今回のフレーズは、王様が王子さまに、権威とは何かについて説明している部分です。
基本の使い方の「reposer」
さて冒頭で触れた「reposer」ですが、実はいろいろな意味を持つ不思議な動詞です。
基本的な使い方は、「poser(置く)」「reposer(再び置く)」です。
- Il a posé la lampe sur la table.
(彼はランプをテーブルに置いた)
- Il a reposé la lampe sur la table.
(彼はランプをテーブルに戻した/そっと置いた)
繰り返しの「re-」が付いた「reposer」は「再び置く」という意味なので、この場合は「ランプを戻した」という意味になりますが、「reposer」には「再び」という意味を離れた「静かに置く」「そっと置く」になる場合もあります。
どちらの意味になるのかは、文脈で判断することになります。
特殊な使い方の「reposer」
ただし今回のフレーズでの特殊な使い方は、「静かに置く」という意味ではありません。
今回のフレーズの「reposer」は「基づく」という意味で使われており、これは元の動詞である「poser」にはない意味です。
前述通り「reposer sur ~」の形で「(家などが)~の上に建てられている」「(事柄が)~に基礎を置く/基づく」などの意味になります。
今回のフレーズの主語は「l’autorité(権威)」であり、建物などではないので「~に基づく」という意味です。
なので王様が言っているのは、「権威(というものは)まず、理性に基づくものだ」ということになります。
王子さまは、大好きな日没を見るために、自分の小さな星では椅子を引いていたようですが、太陽が王様の言うことを聞くなら、椅子を引かずに済むと考えたわけです。
突拍子もない王子さまの提案は、理性ある王様に断られてしまいます。
でも大人の対応をした王様は、この言葉をきっかけに、王子さまにつまらないと思われてしまうんですよね!
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