フランス語でどもると?
今回のフレーズには「je…je」になっている部分があります。
これこそが、フランス語でどもる際の典型的な形です。
その理由もご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Alors je… je t’ordonne tantôt de bâiller et tantôt de…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第10章の前半にある王様のセリフです。
「alors je… je t’ordonne tantôt de bâiller et tantôt de…」
「alors」は「その時」「それなら」「それだから」などという意味です。
「je」は「わたし」、「t’ordonne」は2人称代名詞単数目的格の「君を」「君に」を意味する「te」と「ordonner」の活用形(現在形)「ordonne」が合わさったものです。
「ordonner」は(事柄を)「命令する」「指示する」などの意味です。
「ordonner à(人)de +(動詞の原形)」という形で「(人に)~せよと命令する」になります。
「tantôt」は「tantôt ~ tantôt ~」の形で「ある時は~、ある時は~」という意味になります。
「de」は前置詞、「bâiller」は「あくびをする」という意味の動詞の原形、「et」は「そして」です。
背景を見てみると
旅に出た王子さまが最初にやって来たのは、年老いた王様が1人で暮らす小さな星でした。
王子さまを見つけた王様は「家来がやって来た」とばかり、大喜びです。
でも長旅で疲れていた王子さまは、王様の前であくびをして王様にたしなめられます。
すると王子さまは我慢できないと反論するのですが、「家来」に反論された王様はすぐに禁止したあくびを許し、逆にあくびを命令するのです。
あくびを命令された王子さまは赤面して無理だと言い、それに対する王様の反応が今回のフレーズです。
どもった背景
冒頭で触れた通り、今回のフレーズにある「je…je」は、どもっている部分です。
背景からわかるように、この場面はまるで漫才の掛け合いのようなセリフが続きます。
ずっと1人ぼっちだった王様は、自分の威厳を保つために誰かに命令したり指示したりすること自体が嬉しいので、王子さまに反論されてどもってしまった様子です。
「je…je」になる理由
そもそも「どもる」というのは、自分の言いたいことが言いにくくなっている状態です。
そのためどもってしまっている人は、普通必要最低限のことを言おうとしています。
日本語は主語をかなり大胆に省略することが多いので、各フレーズの始まりは様々な形になります。
それに対し、フランス語で主語を省略することはかなり珍しいので、必要最低限のことを言おうとすると、フレーズの始まりは「je(わたし)」になることが多く、その結果、「je…je」と言いながら口ごもってしまうのです。
なぜどもっている?
なおここでの王様は、王子さまに何度も言い返されてどもってしまった挙句、言いたいことがすべて言えずにフレーズが途切れてしまっています。
このフレーズの直前で、王子さまは繰り返しあくびをすることはできないと断っています。
今回のフレーズが「alors(その時/それなら/それだから)」で始まっているのはそのせいです。
王様がどもっているのは、どうすれば王子さまが自分の言うことに従ってくれるのかを考えて、言い淀んでしまったからだと思われます。
王様のセリフを完成させてあげよう!
そのため、今回のフレーズの「Alors je… je t’ordonne tantôt de bâiller」までの意味としては、「それならわたし…わたしは、ある時はあくびをするように命ずる」ということです。
するとその後の言い淀んでしまった部分には、「そしてある時はあくびをしないように(命ずる)」が入るように思われます。
「et tantôt de…」の「…」を「あくびをしない」という内容で埋めるなら、否定表現の「ne ~ pas」を使って
- Alors je… je t’ordonne tantôt de bâiller et tantôt de ne pas bâiller.
(それならわたし…わたしは、ある時はあくびをするように、ある時はあくびをしないように命ずる)
ここでのポイントは、「bâiller(あくびをする)」が前置詞の「de」に導かれているので、「ne ~ pas」に挟まれた形ではなく、「ne pas bâiller」になることです。
命令すること自体が目的化してしまっている王様は、やはり漫才そのものですよね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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