変化の理由
今回のフレーズを意訳するなら、「そんなことはどうでもいい」になるのですが、フランス語はやっかいなので、こういったフレーズでさえ、名詞の性による変化があります。
どういう仕組みで、何が変化するのかをご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Cela n’a aucune importance.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは第9章後半の会話部分にある、バラの花のセリフです。
「cela n’a aucune importance」
「cela」は「あれ」「それ」、「n’a」は「ne」の省略形「n’」と「avoir」の活用形(現在形)「a」が合わさったものです。
なお、否定の「ne(の省略形 n’)」は「まったく~ない」「何も~ない」という意味の「ne ~ aucun」の一部です。
「importance」は「重要性」「重大さ」などの意味の女性名詞です。
背景を見てみると
旅立ちの朝、王子さまはバラの花に別れを告げました。
わがままで見栄っ張りなバラの花は、始めのうちは何も言わずにせき込んで見せるだけでした。
けれど急に、自分が愚かだったこと、王子さまが好きだということ、それでも自分の取った態度のせいで、王子さまはそれを知らなかったことを打ち明けます。
今回のフレーズは、気丈に振る舞うバラの花が、大切なことを打ち明けながらも、それを打ち消している場面です。
変化する部分は?
冒頭で触れた通り、今回のフレーズは「そんなことはどうでもいい」という意味なのですが、1つずつ単語を見ていきます。
「cela」で「それ」、「ne ~ aucun」で「まったく~ない」、「importance」は「重要性」なので、直訳するなら「それにはまったく重要性がない」ということです。
変化しているのは「aucune」で、これは形容詞「aucun」の女性形で、発音が変わります。
「importance(重要性/重大さ)」が女性名詞なので、それに合わせて変化しているのです。
例文
形容詞「aucun」は、今回のフレーズのように「ne ~ aucun」で「まったく~ない」で使うことが多いので、「彼には友だちが1人もいない」という例文で変化を見てみます。
「ami(友だち)」の女性形は「amie」なので、これを両方使います。
- Il n’a aucun ami.
(彼には友だちが1人もいない) - Il n’a aucune amie.
(彼には女友だちが1人もいない)
1の「Il n’a aucun ami.」の方は「ami」が男性形なので、「(男女関係なく)友だちがまったくいない」という意味になります。
それに対し、2の「Il n’a aucune amie.」の方は「amie」が女性形なので、「(彼女どころか)女友だちの1人もいない」「まったく女っ気がない」という意味です。
男性形か女性形かで、かなり意味が変わりますね!
「ami(友だち)」の方は、男性形「ami」・女性形「amie」で発音は変わらないものの、「aucun」は女性形「aucune」で発音が変わるため、話し言葉でも簡単に区別がつくのです。
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