299 作者の望郷の思いがにじみ出ている? Malheureusement la France est bien trop éloignée.

動詞

フランス語で読もう

今回のフレーズでは距離を表しているのですが、『星の王子さま』という作品の背景を考えると、作者の想いが伝わって来るかのような表現があります。 

フランス語で読むからこそ感じられるので、ぜひ味わってみてください。 

このフレーズの場所と背景

では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Malheureusement la France est bien trop éloignée.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第6章の中頃にあります。 

第6章の最初の会話部分の後にある段落の中のフレーズで、語り手の男性による説明部分です。 

「malheureusement la France est bien trop éloignée」

「malheureusement」は「運悪く」「不幸にも」という意味です。 

「la」は定冠詞単数女性形、「France」は女性名詞で国名の「フランス」、「est」は「être」の活用形(現在形)です。 

「bien」は「よく」「正しく」「非常に」「本当に」、「trop」は「あまりに」「非常に」、「éloignée」は「遠くに離す」「遠ざける」などの意味の動詞「éloigner」の過去分詞「éloigné」の女性形です。 

「être + 過去分詞」の形であり、「éloigner」は過去表現になる際は「avoir」を伴なう普通の動詞なので、ここでは受動態になっています。 

背景を見てみると

王子さまに「日没を見に行こう」と誘われましたが、男性は「(日没まではまだ時間があるから)待たなきゃ」と答えます。 

王子さまは自分の星にいると、いつでも日没を見られるのですが、地球上では異なります。 

今回のフレーズは、男性が読者の私たちにその理由を説明している部分の一部です。 

この直前で、「アメリカが正午を迎えるころ、フランスで日が沈む」という意味の説明をしています。 

全体の意味

ごく小さい星の住人である王子さまは、いつでも好きな時に日没を眺められる環境にいたのですが、それよりはるかに大きな地球上では、日没は24時間に1回しか見られません。 

それを説明するために、アメリカにいる人がフランスの日没を見ることはできないという例えを使っています。 

なので、ここでの「malheureusement」は、「残念ながら」と捉えると分かりやすいです。 

「残念ながらフランスはあまりにも遠く離れている」ということですね。 

作者の望郷の思い

ところで『星の王子さま』は、第二次世界大戦中にやむなくアメリカに渡った作者が、アメリカで出版した作品だということをご存じの方も多いと思います。 

当時のフランスは占領されていたため、作者はとても心を痛めていたと言われています。 

そのせいでしょうか、ここでの例えは、「アメリカにいる人」が「フランスの日没を見たがっている」という設定になっています。 

ただ単に時差の関係で見るだけなら、「フランスにいる人」が「中国や日本の日没を見たがっている」ということでもいいのですが、そうではありません。 

あくまでも個人的な意見ですが、この設定には作者の望郷の思いがこもっていたように思うのです。 

言い換えると残念に

それは具体的に言うと、今回のフレーズにある「éloignée」という単語に表れているような気がします。 

というのも、この動詞(原形は「éloigner」)には、感情的・心情的な意味での距離を表すニュアンスが含まれることがあるからです。 

物理的に「遠い」と言うだけなら、形容詞の「loin」を使っていてもおかしくはありません。 

今回のフレーズを「Malheureusement la France est bien trop loin.」にしてしまうと、「残念ながらフランスは遠すぎる」ぐらいの意味になってしまい、それこそかなり残念な結果になってしまいますが…。 

この記事を音声で聞くなら

シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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