ごく基本的な単語だけど…
今回のフレーズには「petit」という単語が2回登場しています。
「小さい」という意味が代表的で、ごく基本的な単語ではありますが、実は和訳しにくい使い方もある形容詞です。
いくつかの使い方をご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Ah ! petit prince, j’ai compris, peu à peu, ainsi, ta petite vie mélancolique.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第6章の始めにあります。
第6章第1番目のフレーズで、語り手の男性の説明です。
「ah ! petit prince」
「ah !」は間投詞「ああ!」で、喜びや驚きなどを表します。
「petit」は「小さい」「幼い」「かわいい」、「prince」は「王子」という意味の男性名詞です。
「j’ai compris, peu à peu」
「j’ai」は「わたし」を意味する「je」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
「été」は「être」の過去分詞、「compris」は「理解する」「わかる」などの意味の「comprendre」の過去分詞です。
「ai compris」の部分は「avoir +(動詞の過去分詞)」になっているので過去表現です。
「peu」は「少量」を意味しますが、「peu à peu」で「少しずつ」の意味です。
「ainsi, ta petite vie mélancolique」
「ainsi」は「そのように」、「ta」は所有形容詞女性形で「きみの」、「petite」は「小さい」「幼い」「かわいい」を意味する形容詞「petit」の女性形、「vie」は女性名詞で「生命」「生涯」「一生」「生活」などの意味です。
「mélancolique」は形容詞で、「愁いに満ちた」「ゆううつそうな」「もの悲しい」「うら寂しい」などの意味です。
「vie(生命/一生/生活)」が女性名詞なので、「petit」が女性形の「petite」になっていますが、「mélancolique」は語尾が「e」で終わるので、そのままの形です。
背景を見てみると
王子さまの星については、毎日行うお手入れの一環である、小さなバオバブの抜き取りなどについて語られていました。
王子さまが羊の絵をねだったのは、小さなバオバブを食べてもらうためでしたが、その一方で王子さまは、星での暮らしについても話すようになりました。
第6章では、これまでとは違う王子さまの姿が語られます。
今回のフレーズは、その前に男性がつぶやいたひと言です。
1つ目の「petit」
さて今回のフレーズにある2つの「petit」、違いは分かりましたか?
最初の「ah ! petit prince」の「petit」は、「petit prince」の一部ですね。
和訳する必要はありませんが、あえて言うなら「小さい」と「かわいい」の両方かもしれません。
この本のタイトル『Le petit prince』を『星の王子さま』としたのは名訳だとは思いますが、それだけ「petit」が訳しにくいということが現れていると思います。
でも「petit」の訳しにくさは、このレベルにとどまりません。
もう1つの「petit」
それがある意味極端に表れているのが、今回のフレーズのもう1つの「petit」である、「ta petite vie」の「petit」です。
ここでは男性が、大好きな王子さまについて語っているので、愛情を込めた表現であることは間違いありません。
この第6章では、王子さまが悲しかった時のことが語られている場面があるのですが、その前触れとしての役割を果たしているのが今回のフレーズです。
ここからは個人的な解釈になりますが、王子さまよりずっと年上である語り手の男性にとって、とても悲しかった様子を語る場面での「ta petite vie」の「petit」は、「小さい」の延長線上にある「短期間」と捉えられると思っています。
「petit」には、「un petit moment(ちょっとの間)」という使い方もあるのです。
特殊な「petit」
ただしこの「ta petite vie」という言い方は、しばしば相手を侮辱する時にも使われる表現です。
もちろん、王子さまと男性との関係ではあり得ませんが…。
この場合の「ta petite vie」は、「お前のつまらない人生/一生/生活」という意味になります。
身近な人からこんなことを言われたら、ショックで寝込んでしまいそうな言い方です。
「petit」の語順
ところで、「ta petite vie」の後には「mélancolique(愁いに満ちた/ゆううつそうな/もの悲しい/うら寂しい)」という形容詞もついています。
つまりここでは「vie」という名詞の前後に1つずつ形容詞がついているのですが、大抵の形容詞は、名詞の後ろからつくものです。
なのでどちらかと言うと、名詞の前についている「petit」の方が特殊です。
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