「アニメ」で覚えよう!
今回のフレーズにある「animé」は、日本語の「アニメ」の由来になった単語ではありませんが、元のラテン語は同じ言葉です。
つまりフランス語の「animé」から見ると、日本語の「アニメ」は甥か姪に当たります。
ただし意味や使い方は違うので、混同しないでくださいね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Quand j’ai dessiné les baobabs j’ai été animé par le sentiment de l’urgence.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の終わりにあります。
第5章の最終フレーズで、語り手の男性の説明です。
「quand j’ai dessiné les baobabs」
「quand」は疑問詞として使われる時は「いつ」という意味ですが、ここでは「?」がないので、接続詞としての使い方です。
その場合は「~する時に」「~するたびに」という意味になります。
「j’ai」は「わたし」を意味する「je」の省略形「j’」と「avoir」の活用形(現在形)の「ai」が合わさったものです。
「dessiné」は「デッサンする」「描く」「製図をする」などの意味を持つ「dessiner」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「les」は定冠詞複数形、「baobabs」は「バオバブ」という意味の男性名詞「baobab」の複数形です。
「j’ai été animé」
「j’ai」は前述通り、「été」は「être」の過去分詞、「animé」は「(モノ・コトに)生気を与える」「活気づける」「(人を)鼓舞する」「(人を)奮い立たせる」という意味の「animer」の過去分詞です。
「ai été」の部分が「avoir +(動詞の過去分詞)」になっているので過去表現、さらに「été animé」の部分が「être +(動詞の過去分詞)」になっています。
「animer」は、このシリーズの第198回でご紹介した、「17の変わり者動詞」のメンバーではありません。
ということは、「être +(動詞の過去分詞)」で過去表現になるわけではなく、受け身になっています。
「par le sentiment de l’urgence」
「par」は前置詞で、「~を通って」という通過する場所、「~の時に」という時間や時期、「~がもとで」という原因なども表しますが、ここでは「~によって」という動作主を表しています。
同じ「~によって」という意味で、手段や道具などを表すこともあります。
「le」は定冠詞単数男性形、「sentiment」は「感情」「気持ち」「印象」「感じ」などの意味の男性名詞です。
「de」は前置詞、「l’urgence」は定冠詞の省略形「l’」と「緊急さ」「切迫していること」という意味の女性名詞「urgence」が合わさったものです。
背景を見てみると
語り手の男性は王子さまの話しをもとに、バオバブにおおい尽くされてしまった星の絵を描きました。
描いた本人である男性自身が、この絵について、「(他にも)やってはみたものの、できなかった」と言うほど、壮大な緊迫感がある絵に仕上がっています。
第5章の結びである今回のフレーズでは、その理由が明かされています。
「アニメ」と「animer」
さて冒頭で触れた通り、日本語の「アニメ」とフランス語の「animer」の語源は同じです。
フランス語の「animer」は、ラテン語で「魂」や「生命」に当たる単語に由来していますが、英語の「animation」も同じラテン語に由来しています。
つまりフランス語と英語の単語は、兄弟同士のような関係です。
日本語の「アニメ」は、英語の「animation」由来の「アニメーション」の省略語なので、いわば甥っ子か姪っ子のようなものです。
名詞もあるが…
でもフランス語の「animer」は「(モノ・コトに)生気を与える」「活気づける」「(人を)鼓舞する」「(人を)奮い立たせる」という意味であり、動詞です。
この動詞には映像に関する意味はないので、注意が必要です。
ただし、フランス語にも英語と同じスペルで関連単語の名詞「animation」が存在しています。
フランス語の「animation」の方は、「生気」「活気」の他に、「(映像としての)アニメーション」という意味もあります。
…と言うと、「アニメ=animation」だと考えたくなりますが、「animation」の本来の意味は「生気」「活気」であって、「アニメーション」という意味が加わったのは、ずっと後のことだと考えるべきです。
逆輸入現象とは?
なお、今回のタイトルを「チヤホヤされている姪っ子」にしたのは、日本語の「アニメ」の逆輸入と言ってもいい現象が、フランスで起きているからです。
前述通り、フランス語の「animation」にも「(映像としての)アニメーション」という意味があるにもかかわらず、わざわざ日本のアニメを区別して「anime」という表記で外来語として受け入れているのです。
姪っ子なのにチヤホヤ
外来語とはいえ、すでにフランス語として存在しているのですから、「anime」と表記する以上はフランス語として発音されるのが通常ですが、発音上もわざわざ日本語に寄せています。
最近は日本の「味噌」もブームで、「miso」と表記されてスーパーでも見かけるようになりましたが、こちらはフランス式の発音で広まってしまい、日本人としてはちょっと残念な思いで聞いています。
フランス語には「母音にはさまれた「s」は「z」として発音する」というルールがあるため、「ミソ」が「ミゾ」になってしまうのです。
それに引きかえ、「アニメ」は「アニメ」のままで発音されています。
やはりフランス人の「マンガ」「アニメ」好きは本物で、姪っ子のくせにチヤホヤされているのです。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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