熟語を見抜こう!
主語の省略が多い日本語と違い、フランス語にはほぼ必ず主語があります。
ただし意味のない主語も多く、それがわかりにくい形になっている場合もあります。
熟語になっていることが多いので、まずそれを見抜くクセをつけましょう!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Pourquoi n’y a-t-il pas, dans ce livre, 」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の終わりにあります。
第5章最後の段落にあるフレーズの一部で、語り手の男性の説明です。
「pourquoi n’y a-t-il pas, dans ce livre」
「pourquoi」は「なぜ?」「どうして?」、「n’y ~ pas」は否定の「ne ~ pas」と代名詞の「y」が合わさった形です。
「a-t-il」は「avoir」の活用形(現在形)「a」が疑問文のため倒置されて前に出て、「il(彼/それ)」と語順が変わっています。
発音しやすくするために「t」をその間に入れて、3つをハイフンでつなげています。
「dans」は「~の中の」、「ce」は「この(その・あの)」、「livre」は「本」を意味する男性名詞です。
背景を見てみると
バオバブは、早期の対処を怠ると巨大化してしまい、最悪の場合には星の滅亡につながります。
王子さまは、たった3本のバオバブの幼木を放置してしまったせいで、成長したバオバブにおおい尽くされてしまった星を知っていました。
語り手の男性は王子さまの話しをもとに、バオバブにおおい尽くされてしまった星の絵を描きましたが、今回のフレーズは、その絵を見た読者が不思議に思うであろう内容を、男性自身が代わりに述べたものです。
今回扱うのは長いフレーズの前半部分です。
フレーズの全体は:
Pourquoi n’y a-t-il pas, dans ce livre, d’autres dessins aussi grandioses que le dessin des baobabs ?
「n’y a-t-il pas」
前述通り、このフレーズの「a-t-il」は「il a」が倒置されたもの、「n’y ~ pas」は否定の「ne ~ pas」と代名詞の「y」が合わさったものです。
つまり「il y a ~」という形が否定され、さらに倒置された形が「n’y a-t-il pas」 ということです。
「il y a ~」とその否定形
「il y a ~」は「ある」「いる」などの意味で、基本的には、人・モノの存在を表します。
本来の「y」は「そこ」などの意味ですが、ここでの「y」は意味を持たず、「il y a ~」という、決まった形の一部であるだけです。
そして通常の否定形は「il n’y a pas ~」になります。
「n’y a-t-il pas」がなぜ倒置されているのかというと、今回のフレーズは疑問文だからです。
先ほどご紹介した通り、今回扱うのは長いフレーズの一部で、最後には「?」がついています。
「il y a ~」の否定/倒置まとめ
「il y a ~(~がある/いる)」という表現の否定や倒置をまとめます。
- 肯定/倒置なし:il y a ~
- 否定/倒置なし:il n’y a pas ~
- 肯定/倒置あり:y a-t-il ~
- 否定/倒置あり:n’y a-t-il pas ~
意味のない「t」
今回扱った部分は否定形かつ倒置形なので、これが「il y a ~」の表現であることを見抜くのは慣れが必要かもしれません。
でも疑問詞の「pourquoi」で始まって「?」で終わっているので倒置されていること、「n’」と「pas」で否定文であることもわかります。
こうしたことを手がかりに、「il y a ~」という熟語を見つけてしまえば、後はラクですね。
なお、これがすぐには見抜けなくても、「t」に意味のない使い方があるということを知っていれば、慌てないで済みます。
この「t」は、例えば「巻きずし」や「かんづめ」の濁点のようなもの。
加えて「il」や「y」でさえ、熟語「il y a ~」を構成しているだけの存在です。
ないと不便だけれど、あまり意味はないので、惑わされないでくださいね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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