ラクなだけじゃない!
今回のフレーズには、動詞の原形が2つも含まれています。
原形なら活用を考えずに済むのでラクなのですが、それだけではありません。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「Il faut s’astreindre régulièrement à arracher les baobabs」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第5章の中ほどにあります。
第5章2枚目の挿絵から3つ目にあるフレーズの一部で、王子さまのセリフです。
「il faut」
「il」は形式上の主語で意味を持たない使い方、「faut」は動詞「falloir」の活用形(現在形)です。
「falloir」の使い方はほとんどが「il faut ~」の形です。
ここでは「il faut +(動詞の原形)」で「~しなければならない」という意味です。
「s’astreindre」
動詞の原形部分には「s’astreindre」が使われています。
「s’astreindre」は「se」の省略形「s’」と動詞の原形「astreindre」が合わさったものです。
ここでの「se」の省略形「s’」は再帰代名詞と呼ばれます。
「自分を」「自分に」と訳すことで解決する使い方で、詳細は第140回を参照してください。
「astreindre」は「厳格に従わせる」という意味ですが、再帰代名詞を伴なう代名動詞の「s’astreindre」で、「(自分を)厳格に従わせる=自ら厳格に従う」という意味になります。
ここでは「s’astreindre + à +(動詞の原形)」で「努めて~する」という意味です。
「régulièrement à arracher les baobabs」
「régulièrement」は「定期的に」「正規に」という意味、「à」は「努めて~する」という意味の「s’astreindre + à +(動詞の原形)」という形の一部です。
動詞の原形部分には「(植物や雑草などを)根こぎにする」「抜き取る」「引き抜く」などという意味の「arracher」が使われています。
「les」は定冠詞複数形、「baobabs」は「バオバブ」という意味の男性名詞「baobab」の複数形です。
背景を見てみると
語り手の男性は一般論として、植物がどのように地上に姿を現すのかを説明しています。
地上にいる私たちからは見えない、土の中に眠っている種には、よい植物のよい種と、悪い植物の悪い種があります。
王子さまの星には、恐ろしい種が存在しており、それはバオバブの種でした。
バオバブへの対処を怠れば、最悪の場合には星の滅亡につながってしまいます。
今回扱うのは長いフレーズの最初の部分で、王子さまが日々行わなければならないことが語られています。
フレーズの全体は:
「Il faut s’astreindre régulièrement à arracher les baobabs dès qu’on les distingue d’avec les rosiers auxquels ils ressemblent beaucoup quand ils sont très jeunes.」
「なぜ?」を考えよう!
単語のご紹介ですでに触れていますが、今回のフレーズには動詞の原形を伴なう2つの熟語があります。
「il faut +(動詞の原形)(~しなければならない)」と「s’astreindre + à +(動詞の原形)(努めて~する)」です。
そのせいで動詞の原形が2回も登場しているのですが、逆に考えると、原形があるからこそ熟語であることがわかります。
というのも、熟語でない場合に動詞が活用しないことは、あり得ないからです。
意味がたくさんある単語であっても、熟語だということがわかれば限定しやすくて便利です。
あるフレーズに動詞の原形があれば、そこから熟語を探すことで、意味を把握しやすくなります。
内容は人それぞれ?
そして今回のフレーズのように、再帰代名詞を伴なう代名動詞の場合は、さらに便利です。
代名動詞の場合は、原形だからこそ「se ~」または「s’~」という形になっています。
ところが原形以外では、主語によって「me ~」「m’~」や「te ~」「t’~」などになり、さらに元の動詞部分も変化してしまいます。
慣れないうちは、どの動詞が変化したのかが見つけにくくなることがありますし、そもそも覚えにくいのです。
原形が使われている今回のフレーズなどをまる覚えしてしまうのも、効率がいいかもしれません。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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