いくつもの意味がある単語
今回のキーワードは「devoir」です。
このシリーズの第235回ですでに、「devoir +(動詞の原形)」の形で「~しなければならない」「~すべきである」などになるとご紹介していますが、他にもかなり意味の広がりがある言葉です。
こうした単語の意味を取り違えないために、どう考えているのかをご紹介します。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ「J’ai dû vieillir.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の終わりにあります。
第4章最後の段落の最後にあるフレーズで、語り手の男性による説明部分です。
「j’ai dû vieillir」
「j’ai」は「わたし」という意味の「je」の省略形「j’」と、「avoir」の活用形(現在形)「ai」が合わさったものです。
「dû」は「devoir」の過去分詞なので、「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「devoir」は単独で使われれば「~に~を支払う義務がある」「~に対して~の義務がある」などの意味です。
「devoir +(動詞の原形)」の形で「~しなければならない」「~せざるを得ない」「~するに違いない」「~するつもりである」という意味になります。
動詞の原形部分には(人が)「老いる」「年をとる」という意味の「vieillir」が使われています。
背景を見てみると
王子さまの絵を描くために、男性は鉛筆や色鉛筆を買いそろえたものの、6歳の時にボアヘビを描いただけで、それ以降は絵を描くことを止めてしまったので、絵には自信がないようです。
男性は試行錯誤しながら王子さまの絵を描いた様子を語っていますが、失敗したのは王子さまが説明しなかったことが理由であるとも言っています。
おそらく王子さまは男性が自分に似ていると思っていたものの、男性は自分が描いた箱の中にいるはずの羊は見えないと告白し、自分も大人のようになってしまったのだろうと言っています。
そして今回のフレーズになるのです。
見えない羊
男性は王子さまに出会った後、割とすぐにゾウを飲みこんだボアヘビの絵を見せています。
なので王子さまにしてみれば、男性が自分で描いた箱の中に羊を見ていると、疑わなかったに違いありません。
でも実は、男性に羊は見えていません。
描かれていない羊を見ることができるのは子どもだけだと、男性は考えているのでしょうか?
背景から理解しよう!
今回のフレーズは、こうした背景がきちんと理解できていないと、正しい意味にたどり着かないかもしれません。
というのも、「devoir」という単語にはいろいろな意味があるからです。
単独で使われれば「義務がある」という意味ですが、今回のフレーズのように動詞の原形を伴なう形だと、かなり意味が広がります。
義務以外の意味
冒頭で触れた通り、このシリーズの第235回ですでに、「devoir +(動詞の原形)」の形で「~しなければならない」「~すべきである」などになるとご紹介しています。
そして今回は、これに「~せざるを得ない」「~するに違いない」「~するつもりである」を加えています。
いろいろな意味があるので困りますが、背景から考えてあり得ないものを除いていく消去法を取ります。
動詞の原形部分の「vieillir」は「年をとる」という意味で、過去表現になっていることも、一緒に考えます。
しっくりくるのは?
すると、このフレーズの文脈で「~しなければならない」「~すべきである」と解釈するのには無理があります。
「年をとらなければならなかった」「年をとるべきであった」は、不自然だからです。
こうして考えると、「年をとったに違いない」というのが、一番しっくりくるのです。
名詞も!
なお「devoir」には名詞もあります。
男性名詞で、「義務」「なすべきこと」のほか、「宿題」という意味があります。
日常会話で圧倒的に使われるのは、「宿題」としてですね。
子どもが騒いでいるのを見た他人である大人が、「Tu as fait tes devoirs ?(宿題はしたの?)」などと言って、笑いながらたしなめているのを見かけたりします。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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