「if」以上の働き
フランス語の「si」という単語を見ると、英語の「if」と同じだと理解している方も多いと思います。
確かに「si」には「もしも」という意味があり、「if」と同じように使われることも多いです。
ただし「si」が「if」同様に使われるのは、第1と第2の使い方だけ。
フランス語の「si」にはさらに第3・第4の使い方があり、「if」にこの働きはできないのです。
特に第3は、かなり独特な使い方ですよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Pas si petit que ça…」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の終わりにあります。
第2章の最後から2行目にあり、王子さまのセリフです。
「pas si petit que ça」
「pas」は否定語、ここでの「si」は「que」と共に使われて比較を表します。
「petit」は「小さい」「幼い」「かわいい」などの意味、「ça」は「あれ/それ」を意味する「cela」の話し言葉です。
実はこのフレーズには省略されている単語があるので、後述します。
背景を見てみると
語り手の男性による4枚目の羊の絵には、ただの箱が描かれていました。
王子さまはすぐに気に入り、箱の中に入っているはずの羊には、草がたくさん必要かどうかを聞いてきたので、男性は「ごく小さな羊」だと言います。
それに対しての王子さまの言葉が、今回のフレーズです。
省略されているのは?
さて前述通り、このフレーズには省略されている単語があるので、それを補います。
省略されているのは「il n’est」なので、本来は「Il n’est pas si petit que ça…」になります。
「il n’est」の「il」は3人称代名詞単数男性形で「彼」「それ」の意味、「n’est」は否定語の「ne」と動詞「être」の活用形(現在形)の「est」が合わさったものです。
見えてくる形
本来のフレーズがわかると、「ne ~ pas si +(形容詞/副詞)+ que ~」という形が見えてきます。
この意味は「~ほど~ではない」なので、「Il n’est pas si petit que ça…」は「彼はそれほど小さくはない…」ということになります。
ここでの「il(彼/それ)」とは背景から、男性が男性は「ごく小さな羊」だと言った、4枚目の絵に描かれた箱の中に入っているはずの羊だと分かりますよね?
王子さまが言いたいのは、「絵の中の羊は、男性が言うほど小さくはない」と言うことです。
第3の「si」
実はこの形「ne ~ pas si +(形容詞/副詞)+ que ~(~ほど~ではない)」こそが、タイトルや冒頭で触れた「si」という言葉の第3の使い方です。
「~ほど~ではない」という、否定の比較になっていて、比較の対象は「que」の後に示されます。
今回のフレーズの場合は、「ça(それ)」ということです。
4種類の「si」まとめ!
ここで、4種類の「si」についてまとめておきたいと思います。
このうち、第1と第2は英語の「if」と同じ使い方です。
①もしも
この使い方は、このシリーズですでにご紹介済みです。
例えば第169回の「C’est très utile, si l’on est égaré pendant la nuit.(夜間に道に迷ったらとても便利である)」
②~かどうか
これは、このシリーズの第177回で扱った「S’il vous plaît.」に近い使い方です。
「Merci de me dire si cela vous plaît ou non.(気に入ったかどうかを言ってください)」
③~ほど~ではない
今回のフレーズの他にも「ne ~ pas si +(形容詞/副詞)+ que ~(~ほど~ではない)」を使った例をご紹介します。
「Elle n’est pas si belle qu’on le dit.(彼女は人が言うほど美しくはない)」
「Je ne suis pas si fort que mon frère.(私は兄ほど強くはない)」
「que」の後に母音から始まる単語が来ると、「qu’」になって次の単語と一緒に発音されるので、注意してくださいね。
④否定表現に対する返事
この使い方も、このシリーズの第123回で扱っています。
「Si ! Si ! c’est bien le jour, mais ce n’est pas ici l’endroit…(いや!いや!日付はいいけど場所はここじゃない)」
否定表現に対する返事は、日本語とフランス語では真逆になり、ややこしいです。
第123回で詳細を確認してくださいね。
第3の「si」
今回のフレーズは「Pas si petit que ça…」で、「Il n’est」が省略されているとお伝えしました。
この省略は、主語がハッキリしている時などは、ひんぱんに行われます。
なお繰り返しになりますが、「si」を使うのは比較文の中でも否定の場合だけです。
独特な表現ですが、普段の会話の中でもよく使われますよ!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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