188 「羊」にまつわるいろいろな言葉 Tu vois bien… ce n’est pas un mouton, c’est un bélier.

名詞

「出世動物」? 

日本語には「出世魚」という言葉があり、例えば「ブリ」が小さいときは「イナダ」や「ハマチ」などと呼ばれていますよね? 

フランス語には出世魚のような考え方はありませんが、同じ動物なのに小さい時と成長後では全く呼び方が異なったり、オス・メスでも違ったりします。 

今回のフレーズにもその一部があるので、その他の呼び方も含めてご紹介しますね! 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Tu vois bien… ce n’est pas un mouton, c’est un bélier.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第2章の後半にあります。 

2枚目の挿絵から2行目の会話部分にあり、王子さまのセリフです。 

「tu vois bien」 

「tu」は2人称代名詞単数です。 

意味は「きみ」「おまえ」などですが、「tu」は親しい間柄で使われます。 

複数になると、親しい間柄でも「vous」になります。 

「vois」は「~を見る」「~が見える」などの意味の動詞「voir」の活用形です。 

「bien」は副詞で、「よく」「正しく」「非常に」「本当に」などの意味があります。 

「ce n’est pas un mouton」 

「ce n’est pas」は、「c’est」の否定形です。 

「n’est」は、「ne」と、être の3人称単数の活用形「est」が合わさってできています。 

「un」は不定冠詞単数男性形、「mouton」は「羊」という意味です。 

「c’est un bélier」 

「c’est」は、「これ(それ・あれ)」を意味する「ce」と、êtreの活用形「est」が合わさってできています。 

「un」は不定冠詞単数男性形、「bélier」は「雄羊」という意味です。 

背景を見てみると 

いろいろとあった末に、語り手の男性は羊の絵を描きましたが、王子さまは気に入りません。 

男性の描いた羊は、病気だと言うのです。 

そのため、男性は羊の絵を描き直したのですが、それでも王子さまのお眼鏡にはかないません。 

今回のフレーズは、2枚目の絵がダメである理由を、王子さまが説明している部分です。 

同じ動物なのに… 

今回のフレーズに出てくる2種類の動物は、「mouton(羊)」と「bélier(雄羊)」です。 

冒頭で触れた「出世魚」さながら、まったく違う言葉なのに、同じ動物です。 

それでも、フランス語の「mouton(羊)」と「bélier(雄羊)」は分けて考えられます。 

なぜなら、それぞれの言葉が登場するシチュエーションが異なるからです。 

「mouton(羊)」とは 

日本語にすれば、両方とも「羊」であることには変わりませんが、「mouton(羊)」は羊を意味する一般的な言葉で、毛を刈ってセーターなどの原料にしたり、食肉用にするのも、この呼び方です。 

「mouton(羊)」と呼ぶ場合には、オス・メスの区別はされません。 

「bélier(雄羊)」とは 

それに対して「bélier(雄羊)」はオスのみで、基本的には繁殖用なので、飼育や繁殖の業者以外は、あまりひんぱんには使わない言葉だと思います。 

ただし例外があり、それは占いなどで有名な、星座の名前です。 

日本語で「牡羊座」と言われている星座名のフランス語名が、「bélier」だからです。 

雌羊は? 

今回のフレーズには登場しませんが、「雌羊」に相当する言葉があり、「brebis」と呼ばれます。 

「brebis(雌羊)」も「bélier(雄羊)」同様、基本的には食肉用として使われる言葉ではありません。 

それでも「bélier(雄羊)」よりは「brebis(雌羊)」の方が、よく使われる言葉です。 

なぜなら、「lait de brebis(羊のミルク)」があるからです。 

この「lait de brebis(羊のミルク)」、フランスのスーパーなら、かなり小さな店でも置いてあることがほとんどです。 

また、かなりいろいろなチーズの原料として使われているので、よほどの小規模店で生乳の取り扱いがないとしても、「lait de brebis(羊のミルク)」のチーズがないというのはあり得ないレベルです。 

仔羊は? 

日本にあるレストランでも、フランス料理の店なら、「仔羊」の料理を出しているところがありますよね? 

「仔羊」はフランス語で「agneau」と呼ばれます。 

「agneau(仔羊)」は生後1年未満で、性別はあまり区別されません。 

フランスで好んで食べられているのは、どちらかというと「mouton(羊)」より「agneau(仔羊)」の方です。 

「mouton(羊)」の取り扱いがないスーパーはあっても、「agneau(仔羊)」を置いていない店は珍しいと思います。 

「羊」について 

では、これまでご紹介した「羊」にまつわるフランス語を整理します。 

「mouton(羊)」は、性別を区別しない大人の羊で、毛や食肉に関して使用する語。 

「bélier(雄羊)」は、お父さん羊で、星座の名前。 

「brebis(雌羊)」は、お母さん羊で、「lait de brebis(羊のミルク)」。 

「agneau(仔羊)」は、1歳未満の仔羊で、食肉用。 

かわいそうな仔羊? 

1歳未満の仔羊が肉の名前になっているのは、かわいそうだと感じる方も多いと思います。 

私自身も、具体的に考えてしまうとつらくなるので、実はあまり触れないようにしているぐらいですし、ほとんど口にすることもありません。 

それでも、これがフランスの食文化なんですよね。 

時々フランス人に、「日本人って、クジラを食べるんでしょう?」などと、かわいそうじゃないかという怒りを込めて、または気持ち悪そうに言われることもありますが、同じことです。 

文化などの違いを受け入れるのも、国際交流の1つの要素だと思っています。 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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