「難しい」と言われるけど…
今回のキーワードは「en」です。
ハイフンでつながれた一部ですが、もちろんオマケでついているわけではありません。
ちゃんと意味はあるのですが、フランス語独特のものなので「難しい」とも言われる中性代名詞。
よく知っているお話しで、文脈がきっちりわかっているからこそ簡単に理解できて、お得ですよ!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Fais-en un autre.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の中ほどにあります。
1枚目の挿絵から2行目の会話部分にあり、王子さまのセリフです。
「fais-en un autre」
「fais-en」は、「~を作る」「~をする」を意味する動詞「faire」の命令形「fais」に中性代名詞「en」がハイフンでつながれたものです。
「un」は不定冠詞単数男性形、「autre」は「別の」「他の」という意味です。
よく「不定冠詞 + autre + 名詞」の形で使われます。
背景を見てみると
王子さまはに繰り返しねだられて、語り手の男性はようやく羊の絵を描きました。
でも、王子さまは気に入りません。
男性の描いた羊は、病気だと言うのです。
そして、それに続けて王子さまが言ったのが、今回のフレーズです。
背景からカンタン!
ところで、今回のフレーズ「Fais-en un autre.」は、「fais」が命令形なので、「作って」「して」ですし、「un autre」で「別の」「他の」という意味なので、「もう1つ別のをお願い!」ということです。
でも「もう1つ別の」とは、何でしょうか?
もちろん、背景を知っていれば、「もう1つ別の(羊の)絵」だとわかります。
でも、今回のフレーズの中には「絵」という言葉はありません。
「en」を使わない場合
その代わりになっているのが、「fais-en」の「en」です。
先ほど「en」は中性代名詞だとご説明しましたが、ここでは「絵(dessin)」の代わりに使われています。
つまり、今回のフレーズで「en」を使わない場合は、次のようになります。
「Fais un autre dessin.(もう1つ別の絵をお願い)」
「en」のルール
こうした繰り返しを避けるために、「en」が使われているのですが、「en」は命令文で使われると、ハイフンでつなぐというルールがあります。
そのため、「fais-en」という形になっているのです。
これとよく似ているのが、このシリーズの第177回でご紹介している「Dessine-moi un mouton.」というフレーズです。
ここでも、動詞の命令形である「dessine」に、人称代名詞である「moi」がハイフンでつながれています。
中性代名詞の「en」だけでなく、代名詞が動詞の命令形と一緒に使われると、この形になります。
順番は「(動詞の命令形)-(ハイフン)(代名詞)」です。
中性代名詞とは?
なお、フランス語では「男性名詞」「女性名詞」のように、きっちり性別で分かれているのに、「中性代名詞」というのは、なんとなくぼやけたイメージですよね?
でも実際、ぼやけた存在が中性代名詞になっています。
というのも、今回のフレーズで中性代名詞の「en」置き換えられた「絵(dessin)」は、それまでに男性が描いた1枚目の挿絵の羊のことを指しているわけではなく、このセリフを王子さまが言った時点では存在していない、つまり特定できない「次の絵」のことを指しています。
このように、「特定できない存在」のことを指すのが「中性代名詞」の役割です。
ふわっとわかればOK!
フランス語学習者の間では、「わかりにくい」「難しい」と言われている中性代名詞ですが、先ほども触れたとおり、そもそもが「ぼやけた存在」です。
「勉強しよう」「覚えよう」と意識するのは尊くてすばらしい姿勢ですが、「ぼやけた存在」だからこそ、わかりにくいかもしれません。
英語などにはない言葉だということも、難しく感じさせるのかもしれませんね。
中性代名詞には他の使い方もあり、確かに奥深くはあるのですが、今は語順だけなんとなく覚えておき、意味は「ふわっと理解」するだけで、大丈夫です。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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