「モデル」と「modèle」
外来語として定着している「モデル」という言葉の語源は、今回のフレーズにもある「modèle」です。
ただし、「モデル」と「modèle」には、言葉の意味にズレがあります。
後半でご紹介しますね!
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Mais mon dessin, bien sûr, est beaucoup moins ravissant que le modèle.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第2章の始めにあります。
第2章の3段落目(2段落目と3段落目の間には会話部分があります)の6つ目のフレーズです。
「mais mon dessin, bien sûr」
「mais」は逆説で「しかし」「けれども」です。
「mon」所有形容詞1人称単数で「わたしの」、「dessin」は男性名詞で「デッサン」「絵」「地図」などの意味です。
「bien sûr」は、「信頼できる」「安全な」「確かな」などを意味する形容詞「sûr」を、「よく」などの意味の副詞「bien」で強めた形です。
「bien sûr」で、「もちろん」「確かに」を表します。
「est beaucoup moins ravissant que le modèle」
「est」はêtreの活用形、ここでの「beaucoup」は形容詞の強調語で、「ずっと」「はるかに」という意味です。
「moin ~ que ~」は「~より少なく~」、「ravissant」は「うっとりするほど美しい」「すばらしい」を意味する形容詞です。
「le」は定冠詞単数男性形、「modèle」は男性名詞で「モデル」「模範」「手本」などの意味です。
背景を見てみると
サハラ砂漠で出会った、語り手の男性と王子さま。
人里離れた広大な砂漠のなかだったのに、王子さまの身なり・様子とも、まったくその状況にふさわしいものではありませんでした。
後になって、男性は王子さまの肖像を描き上げ、一番よくできた絵を提示しています。
今回のフレーズは、その絵について語っている部分です。
「modèle」の意味
さて、冒頭でも触れたとおり、外来語の「モデル」の語源は「modèle」です。
そして先ほど「modèle」は男性名詞で「モデル」「模範」「手本」などの意味だとご紹介しています。
「モデル」と「modèle」に意味のズレなど、ないように見えますよね?
「モデル」の意味
では、日本語の「モデル」として真っ先に思い浮かぶのは、何でしょうか?
パリコレなどで活躍する、「ファッションモデル」ではないですか?
実は、「モデル」と「modèle」の意味のズレは、ここにあります。
なぜならフランス語で「ファッションモデル」に相当する言葉は「modèle」ではなく、「mannequin」という言葉だからです。
今回のフレーズでは?
ではなぜ「modèle」の意味に「モデル」があるのかというと、この場合の「モデル」は、「(絵などの)モデル」だからです。
フランス語の「modèle」は、「模範」「手本」という意味が強いのです。
「絵画用モデル」とは、絵の元になっている「手本」のような存在だから、「モデル」なのです。
今回のフレーズでも、「男性の描いた(王子さまの)絵は、モデル(である王子さま)よりもはるかに見劣りする」という意味で使われています。
発音が変化した言葉
なお、「ファッションモデル」に相当する「mannequin」も、日本語の外来語として定着しています。
それは「マネキン」という言葉です。
こちらはフランス語から英語を介して外来語になったので、「mannequin」の英語読みに近く、発音が変わっています。
違和感があった言葉
ちなみにフランス語の「mannequin」は男性名詞です。
きれいなファッションモデルさんたちが、男性名詞の「mannequin」と呼ばれるので、個人的には慣れるまでしばらく時間がかかった単語でした。
フランス語の名詞は、男性名詞だから男性的・女性名詞だから女性的ではないと、頭の中では理解していても、イメージが伴わなくて覚えにくかったり、違和感があったりすることがあります。
「mannequin」は、私の中で違和感そのものだったのを覚えています。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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