単純には覚えられない単語も!
今回のフレーズは、文脈を考えないで読むと誤解しやすいかもしれません。
いくつもの意味がある単語が並んでいるからです。
単語によっては、「A = B」のように単純に覚えられるものもありますが、この方法が通用しない場合もある、というお話しです。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「J’ai beaucoup vécu chez les grandes personnes.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第1章の終わりの方にあります。
3枚目の挿絵から3つ目の段落の2つ目のフレーズです。
「j’ai beaucoup vécu」
「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。
ここでの「beaucoup」は動詞の強調語で、「大いに」「非常に」という意味です。
「vécu」は「生きる」「生活する」「~に住む」「~で暮らす」などの意味の動詞「vivre」の過去分詞です。
「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「chez les grandes personnes」
「chez」は、「~の家に」「~の店に」「~にあっては」「~においては」といった意味で使われます。
「les」は定冠詞複数、「grande personne」は「大人」という意味です。
背景を見てみると
わずか6歳で大人というものにがっかりしてしまった語り手の男性ですが、画家になる夢をあきらめて他の勉強をし、飛行機の操縦士になりました。
今回のフレーズは、この男性が大人になってからの経験を語る場面にあり、自身もまた、周りの大人たちと同じように暮らしてきたようです。
誤解しやすい?
冒頭でも触れたとおり、今回のフレーズは誤解しやすいかもしれません。
述語である「vécu」は「vivre」の過去分詞で「生きる」「生活する」「~に住む」「~で暮らす」などの意味であることはお伝えしましたが、これをどう解釈するのかでかなり変わります。
また「chez」は、「~の家に」「~の店に」「~にあっては」「~においては」ということもご説明済みですが、これによってもかなり変わります。
「chez」の語源
「chez」という言葉にはフランス語らしい響きがあるからなのか、日本には「chez 〇〇」という名まえのフランス料理店が、かなり以前からありますよね?
「chez」の語源はラテン語の「casa」で、「家」という意味です。
スペイン語やイタリア語などでは、言語によって発音は若干異なるものの、ラテン語と同じスペル・同じ意味で使われています。
名詞と前置詞の違い
「家」という意味なので、ラテン語やスペイン語などの「casa」は名詞なのですが、フランス語の「chez」は前置詞です。
この名詞と前置詞という違いが何を意味しているのかというと、「chez」の後には人を表す言葉が来るということです。
そして「chez」は、語源である「casa(家)」よりも意味が広がっています。
「~の家に」「~の店に」以外にも、「~にあっては」「~においては」という意味で使われることが多いのです。
文脈から判断しよう!
今回のフレーズでは、「生きる」「生活する」「~に住む」「~で暮らす」などの意味の動詞「vivre」のすぐ後に「chez」があるので、「~の家に住む」という意味で解釈しやすい条件になってしまっています。
でもここで語り手の男性が言いたいのは、「大人たちとともに生活/暮らしてきた」ということ。
「chez」の意味としては、「~にあっては」「~においては」ということです。
「chez」を「家」として覚えてしまうのは、誤解の元になりますね!
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