セットで覚えよう!
「こそあど言葉」などで距離感にこだわる日本語と違い、距離に関してはかなりアバウトなことが多いのがフランス語です。
そういう意味で今回のフレーズは少々めずらしく、関係する単語と一緒に覚えれば、距離を表す言葉で迷うことはなくなります。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回の「Là il est trop petit.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第4章の終わりにあります。
第4章では、トルコ人の天文学者のエピソードなどを通して、大人がいかに物事の本質を見ていないかを、語り手の男性がひとり語りをしています。
そして終盤では、男性の描いた王子さまの絵について述べています。
今回のフレーズは、2枚あるらしい、王子さまの絵の2枚目について話している部分です。
「là」
「là」は「そこ」「あそこ」、基本的には離れた場所を表します。
前回(第16回)ご紹介した、「ここ」を意味する「ici」よりも離れた場所ということです。
なお、「là」には「a」に右肩下がりのアクセントがついていて、定冠詞の「la」とは異なりますので、注意してくださいね。
「そこ」と「あそこ」の区別は?
通常「là」は「そこ」「あそこ」の両方をあまり区別せずに使われますし、ともすると近距離であってもあいまいにされてしまうものです。
それでも必要に応じて、「そこ」と「あそこ」を使い分けることもあります。
その場合、「là」は「そこ」、「là-bas」は「あそこ」です。
「il」
「il」は3人称代名詞単数で、「彼」を表すのですが、モノやコトを受けて「それ」の意味になることもあります。
このフレーズでの「il」は、絵に描かれた王子さまを指しているので、厳密にはモノですね。
ちなみに、「il」の複数形は「ils」になりますが、単独だと発音は変わりません。
「est」
英語の be動詞に相当する、être動詞の3人称単数の活用形。
「彼」「彼女」などが主語になり、意味は「~です」に当たります。
このフレーズでは「il」つまり「彼」または「それ」が主語ということです。
なお、「il」が複数形になって「ils」になると、動詞の活用形も変わるので、「est」は使えません。
「trop」
「trop」も、第8回でご紹介済みですが、要点をまとめます。
「trop」は「あまりに」「非常に」の意味です。
「trop + 形容詞(または副詞)」の形でよく使われます。
「petit」
基本的には「小さい」ですが、「幼い」「かわいい」という意味があります。
また形容詞だけではなく、場合によっては名詞の「子ども」としても使われます。
ここでは次の単語が名詞なので、形容詞です。
また、「petit」は男性形で、女性形だと「petite」になります。
「il est trop petit」
今回のフレーズ「Là il est trop petit.」は、前回(第16回)ご紹介した、「ここ」を意味する「ici」から始まるフレーズの直後にあります。
「il est trop petit」の部分だけを見ると、「それ(または彼)は小さすぎる」を意味するということは確定します。
なぜ「Là」を使っている?
王子さまの絵を指しているのに、場所を表す言葉を使っている理由は、前回あまりにも詳しくお話ししているので省略します。
ここで注目したいのは、普通はあいまいにされてしまう距離感が尊重されていることです。
お話しの中で距離感が正確なのは、語り手の男性が、対比を使って話しているからです。
対比以外は無視される!
前回ご紹介した通り、「ici」は「ここ」なので、前回のフレーズは「ここでの王子さまは~」と始まりました。
今回は「Là」が「そこ」なので、今回のフレーズは「そこでの王子さまは~」と始まっているのです。
そして、前回は「大きすぎ」ており、今回は「小さすぎ」ている絵は、両方の絵を描いた本人である、語り手の男性に気に入られていないようです。
こうした不満を強調するかのように、絵の距離と絵の王子さまのサイズが対比されているので、作者は距離感を正確に表現する必要があったというわけですね!
この記事を音声で聞くなら
シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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