フランス語あるある?
今回のフレーズには、同じスペル・同じ発音の単語が存在する言葉があります。
いわゆる同音異義語なのですが、やっかいなことに意味を取り違えても、微妙にフレーズが成立してしまうのです。
しばしば笑い話やギャグにもなる、「フランス語あるある」です。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「J’ai volé un peu partout dans le monde.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第1章の後半にあります。
3枚目の挿絵から2つ目の段落の2つ目のフレーズです。
「j’ai volé」
「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。
「volé」は動詞「voler」の過去分詞です。
「ai(avoir)+(動詞の過去分詞)」で、過去を表す表現です。
「voler」は、「(鳥や飛行機などが)飛ぶ」「(人が)飛行機で飛ぶ」などの意味です。
「un peu partout dans le monde」
「un peu partout」で、「あちこちで/に」、「dans le monde」で「世界中」です。
「un peu partout dans le monde」 は、「世界中をあちこち」という意味になります。
背景を見てみると
6歳で画家になる夢をあきらめた語り手の男性は、周囲の大人たちに他の勉強をするようにと言われ、いろいろと思うところはあってもそれに従いました。
その結果選んだ職業は、飛行機の操縦士でした。
今回のフレーズは、操縦士になってからの体験談の一部です。
いろいろな「あちこち」
さて、今回のフレーズによると、語り手の男性は飛行機で、「un peu partout dans le monde(世界中をあちこち)」に行ったようですね。
これを「日本中あちこち」に言い換えるなら、「un peu partout au Japon」ですし、「フランス中あちこち」なら「un peu partout en France」。
日本の場合は国名の前に「au」、フランスの場合は「en」になっています。
これは、「Japon(日本)」は男性名詞、「France(フランス)」は女性名詞だからです。
同音異義語
ところで、今回のフレーズにある動詞「voler」は、先ほど「(鳥や飛行機などが)飛ぶ」「(人が)飛行機で飛ぶ」などの意味だとご紹介しましたが、この言葉には同音異義語が存在します。
スペル・発音ともに全く同じ「voler」で、「(物を)盗む」という別単語があるのです。
「盗む」の「voler」は他動詞であるため、「目的語がつく」ことでわかる場合もあるのですが、目的語がない場合もあります。
どう見分ける?
今回のフレーズから抜き出して「J’ai volé un peu partout.」と言った場合は、前後に「飛行機の操縦を学んだ」や「地理が役立った」などの飛行に関する単語がたくさんあるので、「私はあちこちを飛んだ」という意味だと分かります。
でも同じフレーズ「J’ai volé un peu partout.」が何の脈絡もなく出てくれば、「私はあちこちで盗んだ」という意味になりかねません。
同じ形の動詞なので活用形もまったく同じですし、やはり文脈で見分けるしかないのです。
関連単語まで同一!
さらに、動詞「voler」の関連単語として、名詞の「vol」があるのですが、これも「飛行」「盗み」の同音異義語があります。
他の単語だと、このような場合には、一方が男性名詞・他方が女性名詞ですぐにわかることが多いのですが、なぜか「vol」は両方とも、男性名詞なのです。
ですので、名詞に関しても文脈で判断するしかありません。
ビジネスマンは要注意!
このような背景があるので、動詞の「voler」と名詞の「vol」にまつわるカン違いや笑い話がしばしば登場します。
世界を股にかけて活躍中のビジネスマンの皆さん!
あなたの口ぐせの「世界中を飛び回っておりまして…」のつもりで、何の前触れもなく「J’ai volé un peu partout dans le monde.」などと言わないでください。
一瞬でも、国際詐欺師なのかと疑われかねませんからね!
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!
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