有名なのは一部だけだった!
「à」という前置詞は、「アラカルト」や「アラモード」といった日本語の外来語にも含まれています。
こうした外来語は「à +(定冠詞 + 名詞)」の形になっているのですが、外来語を見ていれば、「アラ~」の形という認識だけですよね?
名詞によって「à +(定冠詞)」の部分が変化するなど、想像しないのではないでしょうか。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「et de m’intéresser plutôt à la géographie, à l’histoire, au calcul et à la grammaire.」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第1章の後半にあります。
3枚目の挿絵のすぐ後にあるフレーズです。
フレーズの全体は少々長いです:
「Les grandes personnes m’ont conseillé de laisser de côté les dessins de serpents boas ouverts ou fermés, et de m’intéresser plutôt à la géographie, à l’histoire, au calcul et à la grammaire.」
今回扱うのは、この後半部分です。
「et de m’intéresser」
「et」は「そして」、「m’intéresser」は「me」の省略形「m’」と動詞の原形「intéresser」が合わさったものです。
ただしここでの「me」の省略形「m’」は、人称代名詞目的格ではありません。
「自分を」「自分に」と訳すことで解決する使い方で、詳細は第140回を参照してください。
「intéresser」は「~に興味を持たせる」「~に関心を抱かせる」という意味ですが、「m’intéresser」で「(自分を)~に興味を持たせる=~に興味を持つ」「(自分を)~に関心を抱かせる=~に関心を抱く」になります。
そして「~に興味を持つ」などの「~」は、この後に登場する前置詞の「à」以降の部分です。
「plutôt à la géographie, à l’histoire, au calcul et à la grammaire」
「plutôt」は「むしろ」「どちらかと言えば」「かなり」という意味です。
ここからは、「m’intéresser(~に興味を持つ/~に関心を抱く)」の「~」の部分を導く、「à」がつく部分です。
4つありますが、名詞の性などによって、「à ~」の形が変わります。
また、名詞にはすべて定冠詞がついていますが、場合によっては「à」との兼ね合いで形が変わります。
ここでは名詞部分を簡単に扱い、残りは後ほどご紹介します。
「géographie(地理)」「histoire(歴史)」「calcul(計算)」「grammaire(文法)」です。
背景を見てみると
ヘビが大きな獲物を丸ごと飲みこんでいる絵、およびその解説を本で読んで、6歳の少年だった語り手の男性はかなり刺激を受けたようです。
そしてそのインスピレーションをもとに、ゾウを丸飲みしたヘビの様子を描き上げました。
けれどその絵を見た大人たちは誰もが、どうして帽子が怖いのかと言うので、今度はヘビの中身のゾウがわかるように2枚目の絵を描きました。
でも大人にもわかるように描いたのに、きちんと理解できる大人はいなかったようです。
そんな大人たちの反応が、前回(第161回)と今回のフレーズです。
主語と述語は?
ところで、今回扱う部分には、主語と述語が欠けています。
先ほども触れましたが、フレーズの全体は「Les grandes personnes m’ont conseillé de laisser de côté les dessins de serpents boas ouverts ou fermés, et de m’intéresser plutôt à la géographie, à l’histoire, au calcul et à la grammaire.」です。
詳細は前回(第161回)を参照していただきたいのですが、主語・述語は「les grandes personnes m’ont conseillé」で、「大人たちはわたしに~することを勧めた」という内容です。
いろいろな「à +(定冠詞)」
さて、今回扱う部分を見ると、「à +(定冠詞)」がさまざまな形に変化しているのがわかると思います。
「à」に続く名詞が男性名詞なのか、女性名詞なのか、また複数なのかで変わり、さらに母音や一部のHから始まる名詞の前でも変わります。
これをまとめると:
- 男性単数:au(à + le)
- 女性単数:à la
- 母音など:à l’(一部のHも含む)
- 名詞複数:aux
外来語は女性名詞
こうして見ると、「アラカルト」や「アラモード」といった外来語になっているのは、女性名詞の単数がついているということが分かります。
今回扱う部分にある「à la géographie, à l’histoire, au calcul et à la grammaire」のうち、「géographie(地理)」「grammaire(文法)」は同じ形になっているので、この2つは女性名詞、「calcul(計算)」は男性名詞ということが分かります。
発音しないのに音がある?
ただし「à l’histoire」となっている「histoire(歴史)」は、これだけを見てもわかりません。
「à l’」という形になるのは名詞の性には関係なく、母音や一部のHから始まる名詞の前です。
Hから始まる名詞なら、すべてこの形になるわけではありません。
今回のフレーズにある「histoire(歴史)」の「H」は「無音のH」と呼ばれ、「à l’」になりますが、これが当てはまらない名詞もあります。
当てはまらない例は「héro(ヒーロー)」で、「有音のH」と呼ばれます。
ただしフランス語の「H」は、「有音のH」「無音のH」に関わらず、すべて発音されません。
発音しないのに「有音のH」と言うのもおかしな話しですが、これがフランス語。
そして残念ながら、この2種類の「H」に関しては、一つずつ覚えるしかありません。
ちなみに、「histoire(歴史)」は女性名詞です。
日本語との共通点?
最後に、今回扱う部分の冒頭にある「et(そして)」の次にある「de」についても触れておきます。
先ほど、主語・述語は前回で扱った「les grandes personnes m’ont conseillé de ~」で、「大人たちはわたしに~することを勧めた」という内容だとお伝えしましたが、この「~」に当たる部分が前置詞の「de」によって示されています。
つまり今回扱う部分の意味としては、「(大人たちはわたしに)どちらかと言えば、地理や歴史・計算・文法に興味を持つ(ことを勧めた)」ということになります。
前回扱った部分では「ボアヘビの絵を放ったらかしにする」ことを勧めているので、大人からのアドバイスは、主に2種類あるわけです。
この長いフレーズでは、今回扱う部分の主語と述語は省略されているのですが、前置詞の「de」は省略できません。
このあたりは、日本語の助詞が省略できないということに、似ていると思っています。
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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。
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