158 実はテクニックだった! et, à mon tour, j’ai réussi, avec un crayon de couleur, à tracer mon premier dessin.

その他(王子さま)

意図したものだった! 

今回のフレーズは、何を言っているのかを理解するのに少々時間がかかります。 

でもそれは、フランス語のやっかいな文法のせいというよりは、作者の意図のせいです。 

こうしたテクニックを見つけられるのも、フランス語で読むからですよね! 

このフレーズの場所と背景 

では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「et, à mon tour, j’ai réussi, avec un crayon de couleur, à tracer mon premier dessin.」の場所と背景を確認しておきます。 

このフレーズは、第1章の始めにあります。 

1枚目と2枚目の挿絵の間にあるフレーズです。 

フレーズの全体は少々長いです: 

「J’ai alors beaucoup réfléchi sur les aventures de la jungle et, à mon tour, j’ai réussi, avec un crayon de couleur, à tracer mon premier dessin.」 

前半部分は前回(第157回)でご紹介しました。 

今回扱うのは、この後半部分です。 

「et, à mon tour」 

「et」は「そして」、「à mon tour」で「わたしの番」という意味です。 

「mon」は所有形容詞1人称単数で「わたしの」という意味ですが、「à mon tour」の「mon」の代わりにほかの所有形容詞を入れることもできます。 

「à ton tour」で「きみの番」、「à son tour」で「彼/彼女の番」、「à votre tour」で「あなた/あなたたちの番」という具合です。 

「j’ai réussi」 

「j’ai」は、「わたし」を意味する1人称代名詞単数の「je」と、「avoir」の1人称単数の活用形「ai」が合わさったものです。 

「réussi」は「成功する」という意味の動詞「réussir」の過去分詞です。 

「réussir à(動詞の原形)」の形で「~することに成功する」になります。 

「avec un crayon de couleur」 

「avec」は「~と一緒に」「~を持って」「~を使って」、「un」は不定冠詞単数男性形、「crayon」は「鉛筆」、「de」は前置詞、「couleur」は「色」です。 

「crayon de couleur」で「色鉛筆」になります。 

「à tracer mon premier dessin」 

「à」は前置詞、「tracer」は「描く」「線引きをする」などの意味の動詞の原形です。 

「mon」所有形容詞1人称単数で「わたしの」という意味、「premier」は「第1の」の男性形、「dessin」は男性名詞で「デッサン」「絵」「地図」などの意味です。 

背景を見てみると 

語り手の男性は6歳の頃に読んでいた本で、ボアという種類は大きな獲物でも丸ごと飲みこむこと、そして飲みこんだ後は消化に6ヶ月かかり、その間は眠ることを知りました。 

その本には、ヘビがクマのような大きな野獣を飲みこもうとする衝撃的な挿絵もあり、少年の想像を助けることになったようです。 

少年時代の男性は、この本の情報をもとに「弱肉強食」について考え込んだようです。 

そして今回扱う部分では、この弱肉強食についての考察の成果が語られています。 

動詞はどれ? 

ところで、今回扱う部分の述語、つまり動詞は「ai réussi」ということは、割とすぐにわかります。 

そしてこの動詞が「avoir +(動詞の過去分詞)」になっているので、過去のことを表していることも、すぐにわかるのではないでしょうか? 

述語の内容は? 

でも、今回扱う部分の意味を考えてみると、「j’ai réussi(私は成功した)」だけでは、何に成功したのかがわかりません。 

なので、この次の部分である「avec un crayon de couleur」を見ることになるのですが、この中で言っているのは「色鉛筆で」ということなので、まだわかりません。 

そして「à tracer mon premier dessin」まで来て、ようやく「réussir à(動詞の原形)」の形で「~することに成功する」の一部である「à tracer」を見つけ、「avoir réussi à tracer」ということがわかり、「描くことに成功した」という、述語の内容がつかめます。 

やっぱりサンドウィッチ好き? 

こうしてみると、今回扱う部分でも、かなりたくさんの単語が挟まっているということが分かります。 

「avec un crayon de couleur」がまるまる、動詞句の間にサンドウィッチになっているのですから。 

ただしこの部分に関しては、文末に持って行くことも可能です。 

つまり今回扱う部分は、「et, à mon tour, j’ai réussi à tracer mon premier dessin avec un crayon de couleur.」とすることができます。 

普通の言い方はどっち? 

…と言うよりは、どちらかと言えばこの方が普通のフレーズです。 

ここからは個人的に思うことですが、「avec un crayon de couleur(色鉛筆で)」を文末ではなく、文中に持ってきたのは、作者が意図したことのような気がします。 

色鉛筆を使ったということを、目立たせているようなのです。 

6歳の子どもが色鉛筆で絵を描くというのは、あまりにも普通なので、通常の言い方(色鉛筆の部分を文末に置く)では、読者はあまり気にすることがありません。 

でも、この部分をあえて動詞句の中に挿入することで、色鉛筆を目立たせているのです。 

高度なテクニックだった! 

色鉛筆を目立たせるメリットとしては、「小さな子どもが描いた」ということの強調だと思います。 

そしてそれを「大人になってからの自分」という立場で、語り手の男性に言わせているのですから、やはり相当な文章テクニックが使われていますよね! 

「やさしい文章で書かれている」と言われる『星の王子さま』ですが、こうした高度なテクニックが隠れていることもあるのです。 

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シリーズ【フランス語版 星の王子さまのフレーズ】は、ポッドキャストでも配信しています。 

下のリンクのクリックでこの記事に該当するエピソードに飛びますので、発音の確認などにお使いくださいね!

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