辞書を見てビックリ!
今回のキーワードは「sahariens」です。
この単語の女性形「saharienne」は、Yves Saint Laurent(イヴ・サン・ローラン)の香水の名前にもなっているので、知っている方も多いのかもしれません。
そして「saharienne」には他にも意味があるのですが、まさかその誤訳が広まっているとは知りませんでした。
このフレーズの場所と背景
では、単語に入る前に、今回のフレーズ、「Les puits sahariens sont de simples trous creusés dans le sable. 」の場所と背景を確認しておきます。
このフレーズは、第25章の始めの方にあります。
第25章の4行目からは小さな段落になっているのですが、その段落の2つ目にあるフレーズで、語り手の男性が感じたことです。
「Les puits sahariens」
「les」は、定冠詞複数形です。
「puits」は男性名詞で、「井戸」という意味です。
「puits」は「s」で終わっていますが、単数・複数が同じ形です。
今回のフレーズでは、定冠詞複数形の「les」がついているので複数ですが、1つの井戸を表す場合でも「un puits」になります。
「sahariens」は、世界一の砂漠である「サハラの」という意味の形容詞「saharien」の複数形です。
「sont de」
「sont」はêtre動詞の3人称複数形、「de」は前置詞です。
「être de ~」の形で、所属や性質・特徴などを表します。
「simples trous creusé」
「simples」は、「簡単な」「単純な」「単なる」などの意味の形容詞「simple」の複数形です。
「trous」は、「穴」という意味の男性名詞「trou」の複数形です。
「creusés」は、動詞「creuser(掘る)」の過去分詞「creusé」が形容詞のように使われています。
ここでは「trous」が複数形なので、変化して「creusés」になっています。
「dans le sable」
「dans」は前置詞で、「~の中に(で)」「~において」などの意味です。
「le」は、定冠詞単数男性形です。
「sable」は男性名詞で、「砂」という意味です。
背景を見てみると
飲み水を探していた王子さまと語り手の男性は、とうとう井戸を見つけます。
でも見つけた井戸は、サハラ砂漠にある他の井戸とはかなり違うようです。
そのことを説明するために、サハラ砂漠にある普通の井戸とはどういう様子なのかを述べている部分が、今回のフレーズです。
「サハラ砂漠」は間違い?
今回のフレーズにある「sahariens」は、「サハラの」という意味の形容詞の複数形だとご紹介しました。
けれど日本語で固有名詞として定着しているのは、「サハラ砂漠」ですよね?
でも「サハラ砂漠」という言葉は、おかしいのだそうです。
なぜなら、「サハラ」という言葉自体が「砂漠」を表しているので、「サハラ砂漠」という言い方は「砂漠砂漠」と言っていることになるからです。
「saharien」の女性形
そして、「saharien」という単語は形容詞なので、当然女性形があるのですが、女性形である「saharienne」は、名詞としても使われます。
もちろん、形容詞の「saharienne」は、男性形の「saharien」と同じ「サハラの」という意味ですが、名詞は違います。
名詞の「saharienne」は、一般的に「サハラスタイルのジャケット」を指します。
この言葉は、サハラ砂漠での冒険や探検に適した、軽くてで通気性のあるジャケットやコートを指すのです。
辞書にも誤訳が!?
ところが、名詞の「saharienne」は、「サファリジャケット」と訳されることがあります。
本来は別の言葉である「サハラ」と「サファリ」を、混同してしまっているのです。
先ほどもご紹介した通り、「サハラ」は「砂漠」という意味ですが、「サファリ」の方は「旅」という意味なので、まったく別の言葉なのです。
ただし、どちらも元をたどるとアラビア語で、冒険や探検の場所が砂漠地帯という共通点があり、さらに音まで似ているので、仕方ないのかもしれません。
もちろん、フランス語では「saharienne」と「サファリ」が混同されている様子はありません。
インターネットで「saharienne」と検索すれば、「サハラスタイルのジャケット」が写真付きで並ぶのですが、改めて見てみれば、それは「サファリジャケット」にそっくりです。
「saharienne」=「サハラスタイルのジャケット」≒「サファリジャケット」で、誤訳とまでは言えないのでしょうね!
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